東海第二再稼働 否決の県民投票条例案 事務方の原案通り 将来実施に含み

 日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働の賛否を問う県民投票条例案が県議会6月定例会に提出された際、大井川和彦知事が添付した「意見書」は、事務方が準備した原案通りだったことが、本紙の情報公開請求で分かった。意見書は将来的に県民投票を実施する可能性に含みを残しており、こうした知事の考え方は当初から担当部署に共有されていたとみられる。(宮尾幹成)

原子力安全対策課による意見書の原案(右の1枚)と、大井川知事の決裁済みで6月定例会開会日の日付が入った意見書(左の2枚)。文面はほぼ同じ

 県民投票条例案は、5月25日に住民グループ「いばらき原発県民投票の会」が約8万7000筆の署名とともに直接請求したのを受け、6月8日に大井川知事が提出した。
 地方自治法は、住民の直接請求を受けて条例案を議会に提出する場合、首長に意見書の添付を義務付けている。知事は意見書で、条例案への賛否を明確にしなかった半面、再稼働に同意するかどうかを判断するに当たって県民の意見を聞く方法については「県民投票を含めさまざまな方法があることから、慎重に検討していく必要がある」と記した。
 条例案は6月23日の本会議で、共産、立憲民主などの賛成少数で否決された。最大会派のいばらき自民、国民民主系の「県民フォーラム」、公明などは反対した。
 本紙は、県庁内で意見書の内容がどのように決まったのかを検証するため、情報公開条例に基づき関連資料を県に請求した。
 開示された資料によると、直接請求翌日の5月26日、原子力安全対策課が条例案と意見書の原案について知事に「伺い」を立て、知事は6日後の6月1日に決裁。決裁前と後の意見書の文面は実質的に同一だった。他方、検討経過を記録した文書は存在しないとされた。
 同課は「直接請求の前から、日常のやりとりで知事の考えは聞いており、それを踏まえて起案した。知事からは『てにをは』の修正くらいしか入らなかった」と説明。直接請求を受けて知事が指示するまでもなく、意見書の方向性は定まっていたことになる。
 検討経過の記録の不存在については「あらためて打ち合わせの場を設けたわけではないため、行政文書としては残っていない」(同課)とした。
 2011年の東京電力福島第一原発事故以降、原発再稼働の賛否を問う住民投票条例案が直接請求を受けて提出されたのは、東京都や静岡、新潟、宮城県など。いずれの知事も賛否を明示するか、少なくとも賛否を読み取れる意見を付けている。地方自治法の逐条解説書も「賛否の意見でなければ意見とは言えない」との見解を採用する。
 そのため、大井川知事の玉虫色の姿勢には、一部の議員から「今からでも賛否をはっきりさせるべきだ」との苦言が出た一方、県民投票という手段自体には否定的でないとして評価する声も上がった。知事は条例案否決後、記者団に「今回の否決が住民投票という選択肢を全て消すことにはならない」と語っていた。

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