社会福祉法人理事長・伏屋淑子さん「入所者避難 どうすれば」

 日本原子力発電(原電)東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働に反対し、廃炉を訴える大型看板を東海村や日立市など7カ所に設置している。多くの人の目に留まるようにと、水戸市のイオンモール水戸内原の近くにも立てている。
 運営している東海村の特別養護老人ホーム「常陸東海園」には、約150人の利用者が入所しているが、ここは原発から3キロほどしか離れていない。
 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、照明器具が垂れ下がり、スプリンクラーが破損。入所者の部屋が水浸しになり、エレベーターも停止していたので、職員が入所者1人1人を抱えて移動させた。そんな中、東京電力福島第一原発で事故があり、放射能汚染が心配になった。その時初めて、原発の危険性を感じた。

社会福祉法人理事長・伏屋淑子さん

 40年ほど前に社会福祉法人を設立し、地域の福祉のために尽くそうと、村内にDV被害の母子の支援施設や保育園を開業した。だが、原発があり、事故の危険性がある東海村に多くの施設を造ってしまったと思うと情けなくなった。
 同時に、原発はもうやめてほしいという思いを叫びたかった。それまでは、法人の施設を宣伝していた大型看板を東海第二の廃炉を訴える内容に変えた。「東海村をつぶすな」「原発はいらない。廃炉に」など、大きく目立つような文言で訴えている。
 看板を設置した後、住民から「頑張ってね」「私も心は同じ」と言ってもらい、思っていることは1緒なんだと感じた。
 東海第2で事故が起きれば、避難するのは困難だ。常陸東海園では、入所者の家族に「事故の際に迎えに来られますか」と確認しているが、多くは「来られない」という回答。職員にも家族がいるので、「事故が起きたら入所者に水を飲ませて、おむつを交換して避難しなさい」と言っている。
 県は、重大事故時の広域避難計画で、福祉施設に避難用バスを確保するように求めているが、多くの入所者を運ぶ車両を確保するのは不可能。いつ来るかも分からないし、放射能汚染の危険がある中で、運転手が来てくれるとも限らない。国も県も村も具体的な避難方法を示せていない。
 入所者の命を預かっている私たちはどうしたらいいのか。避難計画はそもそも実効性がなく、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、感染症対策も盛り込むべきだが難しいだろう。
 電気は足りており、老朽化している東海第二の再稼働は、原電の保身のためでしかない。原電は再稼働のために、防潮堤などの事故対策工事を進めているが、将来的にどれだけ大きな津波が来るか分からない。
 村内には、高レベル放射性廃棄物も多くあり、それによる事故も心配だ。
 新型コロナの流行で、世界的にこれまでの人間の生活スタイルや企業のあり方が見直されている。そういう機会が与えられたと思う。原発もその一つで、エネルギー政策を変えなければならない。 (聞き手・松村真一郎)

<ふせや・すみこ> 1936年、東京都大田区生まれ。外科医だった夫の勤めに伴い、57年に日立市へ。社会福祉法人淑徳会を76年に設立し、翌年に東海村に特別養護老人ホーム「常陸東海園」を開業。現在、法人の理事長を務め、福祉施設やDV被害の母子の支援施設、保育園など村内で8施設を運営する。

東海第二原発とは?

 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給していた。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
 2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。再稼働の対策工事は21年3月までかかる見込みで、資金支援のため、東京電力などが約3500億円を拠出する構図も固まった。再稼働には、東海村や水戸市など6市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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