限定的な除染で避難指示を解除?! 飯舘村長泥地区は今

 東京電力福島第一原発事故で、全村が放射能の影響を大きく受けた福島県飯舘村では、大半の地域で避難指示が解除された。唯一残るのが南部の長泥地区だ。主要道周辺の特定復興再生拠点区域(復興拠点)では、2023年春の解除を目指し優先的に除染が進む。だが今、復興拠点以外も限定的な除染を進め、一挙に地区全体の解除をする動きとなっている。長泥地区はどんな状況なのか取材した。(山川剛史、渡辺聖子)

「田んぼや山は汚染されたまま。帰ることもできない」

 7月7日、10年近い避難生活を強いられている長泥地区の住民、杉下徳子さん(67)と長泥地区に入った。両側にアジサイやサクラが植えられたつづら折りの国道399号(通称・あぶくまロマンチック街道)を下りていく。

 同地区を十文字に走る主要道の両側に広がる地域は、3年後の避難指示解除を目指し、既に農地の除染や、家屋の解体が進んでいた。訪れるたび、砂利が敷かれた空き地が増える。

 だが、復興拠点以外は手付かず。杉下さん宅も取り残された16軒のうちの1軒だ。避難先の福島市から毎週のように一時帰宅して草刈りや掃除をするが、家は傷み、床はぶかぶかする。背後の山は高濃度に汚染されたまま。山から流れてきた放射性物質が集まるのか、特に母屋裏の放射線量は高かった。汚染がなければ毎時0.05マイクロシーベルト前後だが、その数十倍から100倍ある線量だ。

 そんな状況の中、菅野典雄村長(今期で引退を表明)の強い意向で、復興拠点以外の地域は、条件付きで復興拠点と同時期の避難指示解除を目指す話が持ち上がった。国も村長の意向に沿う動きをみせている。

 道路の除染や草刈り、家屋解体はするが、農地などは除染しない限定的な除染により避難指示を解除する。しかし、住むことも、米や野菜を栽培したり、牛を飼ったりすることも前提としない内容だ。

 村から避難指示区域はなくなるが、杉下さんたちにとっては、元の地に帰還する望みを事実上断たれることを意味する。

 村や国の担当者と話すためやってきた夫の定男さん(70)は「反対しても前に進まないから同意した。しかし、田んぼや山は汚染されたまま残され、帰ることもできないのはひどい話だ。線量をはじめ、しっかりこの現実を記録して伝えてほしい」と話した。

杉下さん宅の放射線量(紙面を拡大)

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