優位性失っていた日本の「石炭火力」 政府の支援厳格化は現実後追い

 地球温暖化につながる温室効果ガスを大量に出す石炭火力発電の途上国への輸出について、政府は支援の要件を厳しくした。「インフラ輸出」は安倍政権の成長戦略の柱だが、石炭火力市場は衰退し、見直しは現実の後追いにすぎない。進行中の計画への支援は見直さず、脱炭素化を盾に日本の競争力低下を隠そうとする面がうかがえる。 (石川智規、渡辺聖子、福岡範行、小川慎一)

日本の競争力が低下

 「2010年に入ってからの中国の新設USC(超々臨界圧)プラントは、日本と遜色ない状況」
 環境省の有識者会議は5月中旬にまとめた報告書に、中国製の石炭火力が出力や発電効率などで日本製に肉薄していると明記した。座長を務めた東京大の高村ゆかり教授(環境法)は「業界関係者へのヒアリングでは、中国の方がいいという人もいた」と話す。
 5月下旬、インフラ輸出に関する経済産業省の有識者会議も「日本製機器の優位性のみで海外市場を獲得できた時代は終わりつつある」と報告。日本の競争力低下を明確にした。
 金融機関や企業の方針転換で外堀が埋まってもいた。みずほ、三菱UFJ、三井住友という3大メガバンクが新規の石炭火力へ融資をしないことを表明。丸紅や住友商事なども原則撤退の方針を示している。海外での新規建設に日本企業が乗り出す状況にはなく、政府は取り残されていた。

脱炭素なのに「自己矛盾」

 「原則、支援しないという異例の決着をした」。今回の見直しを提起した小泉進次郎環境相は9日の会見で強調した。外遊時に石炭火力政策への批判の矢面に立ってきたことを振り返りながら、「エネルギー政策全体に風穴を開ける」と自負をのぞかせた。
 一方で経産省は、途上国の脱炭素化を進めることが条件に加わったものの、輸出継続の立場を崩していない。東南アジアなどでは人口増による電力需要の高まりが見込まれる。梶山弘志経産相は「自国の(石炭)資源を使いたい国があるのも事実。最高効率のものを提供したい」と明言した。
 方針見直し後も、ベトナムなど進行中の石炭火力計画への支援は続く。環境保護団体・気候ネットワークの平田仁子(きみこ)理事は「石炭火力は一度できれば長期間動くインフラ。脱炭素というなら支援できるはずなく、自己矛盾だ」と批判する。

再生エネ技術、中国が先行

 「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」という言葉が、今回の見直しで登場した。途上国の脱炭素化のために、再生可能エネルギー設備の提案や政策支援をするというものだ。
 政府が見直した「インフラ輸出戦略」には、水素エネルギーと、二酸化炭素を回収、貯蔵して活用する「CCUS」の提案が盛り込まれた。いずれも、国が肝いりで開発を進めている。
 ただ、新技術はコストが高く、実用化の道のりは長い。太陽光や風力といった再生エネは普及が進んで価格も下がっており、途上国が新技術を受け入れる可能性は低い。しかも再生エネの技術でも、日本は中国に大きく後れを取る。
 新戦略では、高コストで輸出計画が全て頓挫した原発も有力な技術として温存した。視野に入るのは、開発競争が進む小型原発だ。
 京都大の松下和夫名誉教授(環境政策)は「原発は経済性、環境面から望ましくない。原子力、石炭火力の高度化は方向を見誤っている」と指摘。日本が脱炭素化で世界から取り残されることに懸念を示した。

超々臨界圧とは?

高効率とされる石炭火力発電の方式。極限まで高温、高圧にした蒸気でタービンを回すことで、石炭の燃やす量を減らす。圧力や温度が比較的低い「亜臨界圧」「超臨界圧」より二酸化炭素(CO2)の排出量は少ないが、液化天然ガス(LNG)を燃料にするより2倍ほどの排出がある。石炭を高温ガス化して効率を高めた「石炭ガス化複合発電」も、LNGよりCO2排出は多い。

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