ふくしまの10年 無人の街を撮り続けて ②風の音だけが響く中で

夜ノ森駅近くの住宅街では作業員らが除染作業をしていた=富岡町で(飛田さん提供)

 福島県富岡町のJR常磐線夜ノ森駅東側には、整然と区画整理され、落ち着いた雰囲気の住宅街が広がる。春になれば道路沿いのサクラ並木が美しい花を咲かせる名所だ。
 三春町在住の写真家・飛田晋秀(ひだ・しんしゅう)さん(73)が東京電力福島第一原発の事故後、最初に富岡町に入ったのは2012年1月末のことだ。第一原発から半径20キロ圏内にあり、放射線量が高いため、当時は住民でも一時立ち入りが許されるのは1時間半だった。
 「町中心部に自宅があった知人の女性に同行して富岡を目指しました。自分の子どもが小さい時に海水浴に来た記憶があったんですけど、まるっきり印象は違いましたね。人がいないんです」
 町北部の夜ノ森駅方面に向かう。聞こえるのは風の音。バタンバタンという店舗のシャッターが揺れる音。カメラを並木道の先に向けると、防護服姿の作業員らが無言で除染作業をしていた。
 駅東側の一帯は現在も家屋の解体や除染作業が続き、地元住民の姿は見られない。人の気配を感じたのは、JR常磐線が全線で運転を再開した今年3月14日。「下り普通列車に乗って夜ノ森に行きました。鉄道マニアとマスコミが目立ちましたね」。その後、周辺は路地の入り口に立つ警備員だけが目につく静かな街に戻った。

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