汚染水対応、本店後手に 1週間 所長繰り返し要請 東電ビデオ公開

 東京電力福島第一原発事故直後の昨年三月から四月にかけ、建屋地下にたまり続ける高濃度汚染水への対応は現場だけでは厳しく、吉田昌郎所長が本店に何度も助けを求めていたのに、助力が後手に回り、海洋汚染につながっていた。東電が三十日に公開したテレビ会議映像のやりとりから分かった。

自衛隊ヘリが海水投下した際のテレビ会議の様子(3月17日午前10時前。東電提供)

 事故現場では、原子炉を冷やした水が高濃度汚染水となって建屋地下に流れだし、立て坑(ピット)にたまり続けていた。吉田所長は立て坑の水があふれないかを心配し、放水で飛び散った水や雨水が敷地内に降り積もった放射性物質を海に洗い流してしまうことも心配していた。
 吉田所長は三月三十日の会議で、現場のこうした状況を説明し、「私の心臓と胃がキリキリになっている最大の原因」と訴えた。
 そんな吉田所長にとって、本店の対応は非常に遅く感じられたようで、別の時間帯の会議では「本店の復旧班の動きは緊張感が感じられない。水の問題が一番大きいとずっと言っていたけどもう一週間。なんとかしてくんない?」と、いら立ちを隠さないシーンもあった。
 本店からの有効な助力がないまま、三日後には、高濃度汚染水が海に漏れているのが見つかった。現場では2号機の汚染水が地下トンネルや立て坑を伝ってあふれ出す可能性を想定し見回りもしていたが、会議では本店社員が「(漏れた場所は)2号機のタービン建屋とはつながっていないと考え、見て(考慮して)いなかった」と発言するなど、現場と本店の認識のずれもうかがえた。
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 ビデオ公開は今年八月に続き二回目。昨年三月十六日~二十二日と、三月三十日~四月五日の二週間、計三百三十六時間分の映像が公開された。

放水「爆発したら死んじゃう」「霧吹きやな」

 東京電力が公開した福島第一原発のテレビ会議の映像第二弾では、冷却水が減り危機的状況となった3号機の使用済み核燃料プールに自衛隊のヘリコプターが海水を投下したときや、高濃度汚染水が海に漏れ出しているのが確認されたときなどの様子が収められている。(原発取材班)

■ヘリ

 事故から一週間、使用済み核燃料プールは危機を迎え、陸上自衛隊の大型ヘリが投入されることになった。
 三月十六日、吉田昌郎所長は本店が海水投下の手順を用意していないことに激怒。「ただ水入れりゃいいと思ってたのかよ? 周りでわれわれが見てんだぜ。(不安定な状態の核燃料が)爆発したら死んじゃうんだぜ」となじった。
 そんなやりとりもあったが、投下は翌十七日に。午前九時四十八分、隊長機から落とされた海水が3号機にばさっと当たると、対策本部では社員から「おー。いった!」「よしっ」の声。
 次々と投下されるが命中させるのは難しい。「かかってねーよ」「なんだよー」の声が飛ぶ。最後の四回目の投下時には「あー」と落胆の声が上がり、「霧吹きやなー」の声が漏れた。

■漏れ

 四月二日午前十一時、吉田所長の心配が現実のものになった。2号機の取水口近くから海に毎時一〇〇〇ミリシーベルトを超える高濃度汚染水が漏れ出していた。
 「緊急に報告事項があります」。吉田所長はせき払いをし、報告した。前夜、放射線量の高い作業用の立て坑(ピット)があると報告を受け見回った際は線量は低かった。それが二日午前九時半に見回ると、線量が急上昇していたという。
 本店社員は「昨夜の調査結果を聞いて、胸をなでおろしていたのに…」と状況の急変にショックを隠せない様子。武黒一郎フェローは「とにかく止水する場所を調べないと」と焦りの表情だった。

■放出

 二日後、高濃度汚染水を再び海に漏出させないためとはいえ、東電は代わりに低濃度汚染水を海に放出する決断を迫られた。
 四日朝の会議で、吉田所長は、5、6号機の建屋地下にも水がたまり始め、「水槽をつくっていては間に合わない」「頑張れと言われても、到底頑張れない」と訴えた。そして「何らかの判断をしていただかないと。水の処理が喫緊の課題。一番重要な課題だ」と述べた。
 これに武黒フェローは「この後、関係者本部のところですぐに協議をしたい。重要な判断をしなければいけないと思います」と返答した。
 この後、東電は別の建屋地下にたまった比較的低濃度の汚染水を海に放出し、空いた場所に高濃度汚染水を移送すると決めたとみられる。その夜のうちに放出された。

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