県民投票条例案を否決、実質審議1日 東海第二再稼働賛否で茨城県議会委

 日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働の賛否を問う県民投票条例案は、6月18日の県議会防災環境産業委員会で、賛成少数で否決された。参考人質疑などの実質的な審議をわずか1日で終える「スピード採決」。反対した最大会派のいばらき自民は県議会全体でも過半数を占めており、条例案は6月定例会閉会日の23日の本会議で否決される公算が大きい。
(宮尾幹成、松村真一郎、水谷エリナ)

賛成少数で県民投票条例案を否決した防災環境産業委員会=いずれも茨城県議会で

賛成2人、反対7人

 防災環境産業委では、下路健次郎委員長を除く9人が挙手で採決した。賛成は共産の江尻加那氏と無所属の中村勇太(はやと)氏の2人で、自民(5人)、国民民主系の県民フォーラム(1人)、公明(1人)は反対だった。
 採決に先立つ各会派などの意見表明で、自民の白田信夫氏は条例案が投票時期を明示していない点を反対理由に挙げた。
 大井川和彦知事のこれまでの発言などから、仮に条例制定されても、東海第二の事故対策工事が完了する2022年末までは県民投票は実施されないと指摘。「現在の議員の任期(23年1月7日)中には行われない。代議制を補完する直接請求が、選挙で選ばれた次の任期の議会を縛ることになる」と問題視した。
 県民フォーラムの二川英俊氏は「(投票結果は)民間企業の事業運営に著しい影響を与える。再稼働の賛否と切り離して議論することは現実的でない」とした上で、「現段階では条例制定する状況にはない」と述べた。
 公明の田村佳子氏は、「二者択一で多くの民意を吸い上げられるのか」「9億円もの費用をかけて低投票率だった場合、正統性に疑問符がつく」などと指摘した。
 一方、江尻氏は採決する場合は賛成だとした上で、継続審議を要求。中村氏は、直接請求を求める署名活動の成果を「県議会として重く受け止めるべきだ」と訴えた。採決後、江尻氏が継続審議の動議を出したが、賛成少数で否決された。

参考人質疑に応じた東海村の山田修村長

5組10人が参考人質疑 エネ庁や原子力規制庁職員も

 採決に先立って、総務企画委員会と合同の「連合審査会」が開かれ、条例制定を直接請求した「いばらき原発県民投票の会」の共同代表3氏や山田修・東海村長ら、5組10人の参考人質疑があった。
 県民投票の会の鵜沢恵一氏は「きちんと向き合って議論し、合意する県民となるためにも県民投票を実現したい」、姜(山崎)咲知子氏は「自分の意見が大切にされると実感できるプロセスにこそ民主主義が宿る」などと語った。
 山田村長は条例案そのものに関する発言は避け、住民が自由に意見交換できる場の設置を進めるとした。
 このほか、行政手続きに詳しい古屋等・茨城大人文社会科学部教授、経済産業省資源エネルギー庁職員、原子力規制庁職員(4人)の参考人質疑もあった。
 採決後、報道陣の取材に応じた県民投票の会の徳田太郎氏は、自民などが示した反対理由を「納得のいく意見はなかった。非常にレベルの低い議論だった」と批判した。
 条例案は、県民投票の会が8万6703筆の署名を添えて直接請求したのを受け、知事が8日開会の6月定例会に提出した。

連合審査会での参考人の発言要旨

◆学識経験者 古屋等・茨城大人文社会科学部教授
 原発に関する住民投票条例案は東京都や静岡、新潟県などで否決された。「原発稼働の是非について国が責任を持つべきだ」「県民の意向が反映できない」などが否決の理由だが、東京電力福島第一原発事故から間がなく、不確かな状況での判断だった。議会で話し合ったことが住民の総意とはなかなか言えない。原子力先進県の本県だからこそ、条例制定が難しいにしても、できる限り情報公開し、パブリックコメント(意見公募)で住民の意向を聞くなど、独自の判断をしていただくとありがたい。

◆資源エネルギー庁 覚道崇文・資源エネルギー政策統括調整官
 福島原発事故後、国のエネルギー政策は、原発や再生可能エネルギー(再エネ)などを組み合わせる「エネルギーミックス」を基本にしている。原子力については、重要なベースロード電源として、世界で最も厳しい新規制基準に適合するとされたものは、課題である社会的な信頼を獲得した上で再稼働を進める。その一方で再エネを広げ、2050年に向けて脱炭素化を進める。

◆原子力規制庁 田口達也・実用炉審査部門安全規制管理官
 福島原発事故を踏まえて新規制基準を定めた。地震では敷地における最大の揺れの特定に力を割いており、東海第二原発では防潮堤で敷地を守る対策をとっている。防潮堤の高さは20メートルで、想定される津波の高さ17.8メートルを上回っている。それでも津波が入った場合、敷地に水がたまる状況を評価し、緊急用海水ピットを配管するなどしている。格納容器を守るための対策もある。

◆地元自治体 山田修・東海村長
 東海第二原発の再稼働について、住民の意向をどのように把握するか模索している。県民投票条例案に意見することは、今後の取り組みに影響を及ぼしかねないので差し控えたい。どのような方法にしても、住民の意思を反映させるためには情報提供が大切。一方的な提供ではなく、情報を受け取った住民が、対話を通して議論を深めるプロセスが重要だ。東海村では、意見交換の場を設けているほか、島根原発がある松江市で取り組まれた「自分ごと化会議」を進めたい。住民が主体となって、賛否ではなく自由に意見交換できる画期的な取り組みで、住民に関心を持ってもらうためには有効と考える。限られた人数の議論になるが、それを基に多くの住民に取り組みを知ってもらい、原子力問題を考えるきっかけになるといい。

◆いばらき原発県民投票の会 鵜沢恵一・共同代表
 東日本大震災以降、危機感が募り、さまざまな意見を出し、共通の着地点を見いだす社会になってほしいと思うようになった。きちんと向き合って議論し、合意する県民になるためにも県民投票を実現したい。署名期間中、何軒も家を訪問して話す中で、意見を表したいというところが共通していた。こうして集めた約8万7000人の思いの重さを受け止めている。県民投票こそ民意が反映されると思う。より民意をくみ取る方法として県民投票に焦点を当ててほしい。

◆いばらき原発県民投票の会 姜咲知子・共同代表
 私たちが求める県民投票条例案は、学びや対話によって理解するプロセスがセットになったもの。自分の意見が大切にされると実感できる丁寧なプロセスにこそ民主主義が宿ると強く感じる。県民投票で賛否を問い、民意をしっかり受け止め、議会で議論し、その上で知事に判断してもらいたい。民主主義を見つめ直す動きが世界中で出ていて、本県の動きも注目されている。

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