熱帯のチョウ関東に<地球異変 すぐそばの温暖化>

 熱帯地域のインドネシアやマレーシアが主な生息地のチョウが、日本の本州で飛んでいる-。そんな情報の真偽を確かめようと、昨年12月中旬、目撃情報がある神奈川県の三浦半島に向かった。
 探すのは「クロマダラソテツシジミ」。特徴は淡い青紫の羽で、体長は1センチほど。その名が示す通り、南国ムードを演出するため植えられることが多いソテツの新葉を、幼虫が食べて成虫になる。インターネット上には、昆虫愛好家がクロマダラソテツシジミの写真を多く掲載しており、数年前には、寒くなり始める11月に三浦半島で繁殖行動をしている報告もあった。

神奈川県葉山町で確認されたクロマダラソテツシジミ=横須賀市自然・人文博物館の内舩俊樹学芸員提供

 三浦半島では、リゾート施設や大規模霊園、公園、海岸沿いなどのソテツの並木で飛んでいるのが確認されている。「まずは葉が食べられているソテツを見つけて。葉の付け根に綿状のものがあり、そこにサナギがいる可能性があるので、よく観察してください」。横須賀市自然・人文博物館(神奈川県)の内舩(うちふね)俊樹学芸員からアドバイスを受け、注意深く見て回った。
 十数本に一本くらいの割合で、虫に食べられて葉が軸だけになったり、短くなったりしたソテツが見つかったので写真を撮影。綿状の中を探したが、サナギは見つけられなかった。
 内舩学芸員は「三浦半島の昆虫研究グループにも葉の写真を見てもらったが、クロマダラソテツシジミの幼虫の食痕ではなさそう。ただ、昨年までは発生の記録はある」。残念ながら、この目でチョウの痕跡を確認できなかった。

幼虫が栄養源とするソテツ=神奈川県逗子市で

本州で生存地域が北上

 クロマダラソテツシジミは1992年に沖縄本島で初めて確認された。大阪府立大大学院の平井規央(のりお)教授(緑地環境科学)によると、2007年には九州各地(鹿児島、宮崎、熊本、長崎県)のほか兵庫県宝塚市などで、翌08年には三重県各地や名古屋市でも姿が確認されている。地球温暖化や都市部のヒートアイランド現象で気温が上昇し、本州でも生きられる地域が拡大したためとみられる。
 ただ、国内に定着したかというと少々違う。「1月ごろまで生きる個体もいるが、まだ日本国内で越冬するのは無理とみている」と平井教授。冬から5月に、幼虫の栄養源となるソテツの新葉がないことが主な理由だという。内舩学芸員も「冬の間は活動を休止する越冬サナギの特徴を備えていない」と話す。
 現状では、東南アジアなどで発生したチョウが、5月の大型連休後に沖縄や九州に上陸し、繁殖を繰り返しながら本州に広がり、状況によって神奈川、千葉両県辺りまで拡大。冬にはいなくなり、翌年また飛来するパターンのようだ。
 南方のチョウの中には日本で冬を越し、北上を続けて定着した種類も。九州以南に限られていたナガサキアゲハや、東海地方までだったツマグロヒョウモンは、既に北関東にまで広がっている。(山川剛史)

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