サンマが「冬の味覚に」<地球異変 すぐそばの温暖化>

 クリスマスを間近に控えた昨年12月中旬、東京都杉並区内のスーパーの鮮魚売り場に、生サンマのパックが並んでいた。「ようやく頃合いの値段になったけど、鍋の季節に焼き魚はねえ」。買い物中だった近くに住む主婦(64)は小ぶりのサンマを見て苦笑した。
 秋の味覚の代表格であるサンマは2019年、過去にない大不漁だった。全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によると、8~11月の水揚げ量は、前年同期に比べて約7割減の3万7715トン。過去最低の5万2000トン(1969年)を大幅に下回った。
 「異常だよ、異常。天災だ」。北海道様似(さまに)町のサンマ船主.八木田(やぎた)和浩さん(57)は嘆く。8月は思うように漁が進まず、水揚げ金額よりも船の燃料代の方が高くついたという。

暖水塊 魚群南下を妨げ

 サンマは北太平洋に広く分布。夏は餌のプランクトンを求めて北の海域に向かい、秋には北海道沖に南下後、さらに南の産卵場を目指す。しかし、昨年はなかなか南下してこなかった。
 福島県いわき市の小名浜(おなはま)港でのサンマ初水揚げは、秋も終盤となった11月18日と、例年より1カ月半も遅かった。ある漁師は「水温が高くて、いつもより北に行かないとサンマが取れず油代がかさんだ。東京電力の問題(福島第1原発事故による風評被害)で、ただでさえ大変なのに…」とこぼす。
 サンマの資源量が減少傾向にあることに加え、北海道東沖に広がる「暖水塊(だんすいかい)」が南下を阻んだ一因だと、水産研究.教育機構東北区水産研究所の巣山哲(さとし)グループ長は指摘する。暖水塊は、日本の太平洋沖を北上する暖流の黒潮が生みの親で、温度が高い水が渦になった状態。大きさは直径200キロに達することがある。
 同機構北海道区水産研究所の黒田寛主任研究員によると、暖水塊は10年以降、17年を除く毎年夏に発生したが、19年は秋本番の10月に確認された。黒田氏は「まだ強い証拠はないが、温暖化が影響しているのだろう。初めて見る現象だ」と首をかしげる。気象庁によると、日本近海の平均海面水温は、18年までの100年間で1.12度上昇。上昇率は世界平均(0.54度上昇)よりも大きい。

 漁業情報サービスセンター(東京)の渡辺一功(かずよし).漁海況部副部長は、温暖化に伴う海水温上昇と、10数年ごとに魚種によって漁獲量が大きく変わる「海洋生態系の構造転換」が重なっていると指摘。「来年もサンマ資源は急激に増えることはないだろう」と見通す。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年9月にまとめた「海洋・雪氷圏特別報告書」によると、今世紀末の世界全体の漁獲量は、1986~2005年比で最大24%減る可能性がある。サンマ船主の8木田さんは将来を不安視した。
 「過去にも全然取れない時があったが、温暖化が当たり前の世の中になったらどうなるんだか」(石川智規)

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