命奪う猛暑 頻発恐れ<地球異変 すぐそばの温暖化>

 お年寄りが続々と救急車で運び込まれる。いずれも体温40度以上の重症の熱中症。急いで集中治療室へ運び、昏睡(こんすい)した患者の全身を湿らせ、扇風機を当てて熱を下げた。
 記録的猛暑が続いた2018年夏、東京都板橋区にある帝京大医学部付属病院には、2日間で10人ほどの高齢者らが運び込まれた。高度救命救急センターの神田潤医師(43)は「熱中症は特定の日に集中する災害です」と言い切る。
 熱中症は高温多湿で起きやすく、死に至る病気だ。死者数は18年の1年間で1581人(厚生労働省の人口動態統計)。うち8割は65歳以上の高齢者だった。高齢者は熱中症を自覚しづらく、1人暮らしでは発見も遅れてしまうケースが多い。
 命を取り留めても、後遺症で認知症や寝たきりになる場合がある。神田医師によると、病院が18年に行った重症患者の救急搬送1カ月後の追跡調査では、ほぼ全員が自宅に帰れずにいた。

熱中症のリスク大幅増

 国立環境研究所の小野雅司客員研究員の調査によると、高齢者の熱中症の発症率は、最高気温が30度以上の真夏日になると増え、35度以上の猛暑日に急増する。07年の調査では、35~36度の日は真夏日の発症率の7~8倍、37度の日は約18倍に跳ね上がっていた。小野氏は「平均気温が上がるより、猛暑日が数日増える方が影響は大きい」と分析する。
 その猛暑日が、地球温暖化で増える。気象庁気象研究所などが19年5月に公表した予測では、温暖化対策のパリ協定の目標通り、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えることができたとしても日本で猛暑日の頻度は現在の1.4倍となるという。
 早ければ10年後の30年に気温上昇が1.5度になる。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は18年の特別報告書でこう示した。国立社会保障.人口問題研究所の推計では、同じ30年に日本の65歳以上の高齢者は人口の31.2%までに増える。
 真夏の災害時、熱中症の脅威はさらに高まる。如実に示したのは、19年9月に千葉市に上陸した台風15号だった。台風通過翌日の9月10日、停電と断水が続いていた千葉県内各地は猛暑日となり、214人が熱中症で救急搬送された。過去5年の9月1カ月間の搬送者(60~185人)をたった1日で軽く超えてしまった。
 気温と健康の関係に詳しい筑波大の本田靖教授は「暑さの危険は熱中症だけではない」と注意を促す。心臓や呼吸器に持病がある人には、暑すぎることがリスクになる。
 本田教授は今後、台風や大雨被害と猛暑日が重なるケースの増加を懸念する。「公民館に太陽光発電パネルを付けるなどの備えをすべきです。暑さを避ければ熱による死亡は防げるんですから」(福岡範行)

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