減る降雨日数 増える「100ミリ超」<地球異変 すぐそばの温暖化>

 泥がこびり付き、土台が傾いた家々。その周りに、赤い実をつけたまま土砂に埋まったリンゴ畑が広がる。2019年の台風19号で千曲川の堤防が決壊し、浸水被害を受けた長野市穂保(ほやす)地区。19年12月11日に訪ねると、台風から2カ月が過ぎてもなお、住む人をなくした家が点在し、野鳥の声だけが響いていた。
 「30センチぐらい水が上がるとは想定していたんだけど」。地元の建設会社「間堀建設」の穴沢広之常務(42)が、屋根部分が流された駐車場に立って言った。川からあふれた水は高さ2メートルに及んだという。
 住民の暮らしを奪った台風19号は、これまでの治水対策の考え方を覆す大雨を流域に降らせた。千曲川の場合、100年に1度発生する豪雨の降水量を2日間で186ミリと計算。同程度が降っても氾濫しないよう、国が対策を講じていた。ところが穂保地区の約6キロ下流では、わずか1日で186.8ミリの大雨が降った。

台風19号による大雨で氾濫した千曲川=2019年10月13日、長野市穂保で、本社ヘリ「おおづる」から(榎戸直紀撮影)

「極端な気象」大被害

 台風19号が進んだ日本近海の海面水温は、27度以上。この時期としては暖かい海域で発達を続けた。上陸時の中心気圧は955ヘクトパスカル、風速15メートル以上の強風域の半径が600キロ。日本列島をすっぽりと覆うほどの大型となり、各地で観測史上最大の大雨をもたらした。神奈川県箱根町で記録した922.5ミリは、1日の降水量として全国の歴代1位だった。
 こうして1日に100ミリ以上の大雨が降る日が増える一方で、雨の降る日は減っていることが、気象庁の観測データから分かってきた。専門家の間で「気象の極端化」と呼ばれる現象だ。
 背景には、地球の平均気温の上昇がある。気象庁の「気候変動監視レポート2018」によると、世界の年平均気温は100年あたり0.73度の割合で上昇。日本だけをみると、より大きい1.21度の割合で上がっている。

 では、地球温暖化は実際の天気にどれほどの影響を与えているのか。気象庁は、河川氾濫などで200人以上が犠牲となった18年7月の「西日本豪雨」について、気温の上昇と水蒸気量の増加傾向から、温暖化の影響があったと報告書に明記した。個別の気象事例で、温暖化の影響に言及したのは初めてのことだ。
 気象研究所の川瀬宏明主任研究官によると、仮に40年前に「西日本豪雨」が発生したとして、当時の気温や海面水温をもとにシミュレーションしてみると、降水量は6.7%少ない推計になるという。
 気温が高くなるほど、雨のもとになる水蒸気が大気中にため込まれる。その量は、1度上がると7%増えるとされる。ため込まれた水蒸気は低気圧や前線に伴われ、バケツをひっくり返したように一気に降り注ぐ。研究結果は、温暖化の影響を如実に示していた。
 川瀬主任研究官は「100年に1度」という記録的大雨の頻度が、気温が2度上がると最大2割増え、4度上がれば最大で5割増しになると予測。「堤防決壊や浸水による被害を大きくさせる可能性がある」と警鐘を鳴らす。(渡辺聖子)

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