そもそも温暖化って?<地球異変・温暖化のはてな>

 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が2020年、動きだした。世界各国は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出量の削減で高い目標を掲げ、その達成を求められている。そもそも、温暖化はどのように起き、なぜ対策が必要なのか。東京新聞が今年から始めた通年連載企画「地球異変」の一環として「温暖化のはてな」と題し、温暖化にまつわる素朴な疑問を専門家に尋ねて解き明かしていく。(福岡範行、渡辺聖子)

いつから、どうして始まったの?

 18世紀半ばからの産業革命以降、人々が石炭や石油など化石燃料を大量に使うようになり、大気中へ排出される二酸化炭素(CO2)が増え続けて、温暖化が起きている。
 国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多(えもり・せいた)副センター長によると、気温は海面水温や太陽の活動などで上下するが、自然現象だけが原因なら長期的な変動はほぼゼロ。だが、20世紀後半からは気温の上昇傾向がはっきりと観測されるようになった。
 「この上昇は、人間活動が原因と考えないと説明できない」と江守さん。私たちが石炭や石油を燃やすことで出るCO2は、地表から宇宙に出て行くはずだった赤外線を吸収し、地表に熱をこもらせている。このため、CO2を代表格に同じ効果をもたらすメタンやフロンガスなどが「温室効果ガス」と呼ばれている。
 人間の活動が主な原因という見方は1990年には科学者間で論争があったが、観測データと研究の蓄積から確からしさが高まった。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2013~14年の第5次報告書で、人間の活動が温暖化の原因になっていることについて「可能性が極めて高い」と結論づけた。

ニュースに出てくる「1.5度上昇」って?

 世界全体の平均気温が産業革命前からどれだけ上がったかを示す数字。この200年で、既に平均気温は約1度上昇した。温暖化対策は、今後「1.5度上昇」に抑えられるかが最も重要な課題だ。
 世界各国が温室効果ガスの削減を約束したパリ協定では「気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える」と目標を設定した。ところが、各国の削減計画が実現したとしても、目標達成は難しいとされる。IPCCは18年の報告書で、「早ければ30年に1.5度に達する」と警鐘を鳴らした。
 わずかな気温上昇が、なぜ心配の種なのか。江守さんは「常に1.5度のげたを履いている状態になる。いま起きていることが深刻化していくイメージを持ってほしい」と説明する。
 日本では18年、熱中症で1500人超が死亡。19年の台風19号では東日本に甚大な被害を出した。これまでに経験したことがないような極端な気象の発生は温暖化が関係しているとされており、自然災害のリスクを高める。
 海外では、アフリカの乾燥地域で干ばつが頻繁になり、食糧危機や紛争、難民問題の引き金になりかねないという。江守さんは「CO2をほとんど出さない貧しい国の人がひどい目に遭う不公平が既に起きている」と強調する。
 1.5度を超える上昇が進めば、多くのCO2を吸収する「地球の肺」と呼ばれるアマゾンの熱帯雨林が枯れ進んで止まらなくなり、後戻りできなくなる可能性が高まる。

「温暖化はうそ」って聞いたけど?

 気温は、人の住んでいない海上なども含めた観測データから、地球規模で上昇していることがはっきりしている。
 「CO2が原因なのか」と疑問を持つ人もいるが、江守さんは「他の原因がどれだけ地球を暖めるのか、と全部比較して、CO2が主な原因だと理解されている」と解説する。
 例えば、太陽の活動は今、弱まっているが、温暖化は続いている。木星の重力などの影響で地球の公転軌道や自転軸がずれることにより、過去に約10万年周期で氷河期が来ているが、次は5万年ぐらい先と計算されているという。
 大気中のCO2は濃度が0.04%ほどしかないため、影響力を疑問に思う人もいる。江守さんは「大気のほとんどは窒素や酸素だが、赤外線の吸収や放出には何もしない。温暖化に関してだけ見れば、毒にも解毒にもならず、あってもなくても一緒」と説明する。
 こうした理解は、温暖化の研究が盛んになった90年以降の議論の積み重ねの結果だ。「多くの科学者が批判的に検討し、それでも正しいものが生き残ってきた」と江守さん。IPCCの報告書も執筆者以外の世界中の科学者から批評を受けた上で作られているとして、「気候変動を学ぶときは、IPCCでどう書かれているのかに興味を持ってほしい」と語った。

温暖化の仕組みを解説する江守正多さん(国立環境研究所のYouTubeから)

グレタさんは何を求めているの?

 大人たちをにらみつけながら厳しい言葉で温暖化対策を迫る。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)が、19年に開催された国連「気候サミット」での演説は、強烈な印象を残した。18年8月からの彼女の行動と発言は、世界中が気候変動に目を向けるきっかけとなった。
 「気候危機」(岩波書店)の著書がある山本良一・東京大名誉教授(環境経営学)は、グレタさんの訴えを二つ挙げる。
 「一つは科学者の声を聞くこと」。科学者たちはこのまま温暖化が進めば、今の暮らしや人間の命を奪いかねない事態が起きると予測している。グレタさんは政治家らに「科学の下に団結を」と呼び掛け、各国政府に温暖化対策を取るよう求めている。
 もう一つは「自分もデモクラシー(民主主義)の一部であり、一人でも社会を変えることができるということ」。たった一人で始めたストライキは「Fridays For Future(未来のための金曜日)」と呼ばれる地球規模の動きに広がり、19年9月には日本を含め185カ国で700万人を超える人が参加する活動となった。

<2020年3月にベルギー・ブリュッセルで温暖化対策の強化を求める運動に参加したグレタ・トゥンベリさん>

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)とは?

 気候変動を科学的に調べるため、1988年に世界気象機関と国連環境計画が設立した組織。195の国・地域が参加する。気象学などの研究者らの協力を得て、最新の知見を反映した報告書を5~7年ごとに作り、各国の政策決定者に基礎的情報を提供。2007年、地球温暖化対策を訴えてきたアル・ゴア元米副大統領とともにノーベル平和賞を受賞。現在21~22年の第6次報告書の公表に向け、三つの作業部会で計90カ国の721人(18年4月発表)が執筆を進めている。

環境研が動画で温暖化を解説

 国立環境研究所は、温暖化の解説動画を動画投稿サイト「YouTube」で配信中。「ともだちに話したくなる!地球温暖化のリアル」と題し、全3回。江守さんが1時間かけて説明している。
 また、環境研は6月9日に、この動画のダイジェスト版を公開。1回を20分ほどに短縮し、字幕を付けた。概要欄には、動画で紹介されているデータも示されている。

国立環境研究所の「ともだちに話したくなる!地球温暖化のリアル」ダイジェスト版
国立環境研究所の動画「ともだちに話したくなる!地球温暖化のリアル」

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