青森・六ケ所村の再処理工場 新基準「適合」 規制委が審査書案了承

 原子力規制委員会は13日の定例会合で、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の事故対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」を了承した。本格稼働の前提となる新基準に事実上適合した。今後、一般からの意見公募や経済産業相への意見照会などを経て、正式決定となる。

日本原燃の使用済み核燃料再処理工場=4月、青森県六ケ所村

規制委「工場稼働まで長期化も」

 再処理工場では、原発の使用済み燃料から、再利用できるプルトニウムやウランを取り出す。燃料を繰り返し使う国の「核燃料サイクル政策」の中核施設とされ、適合は稼働に向けた一歩となる。ただ、適合後も設備の工事計画の審査が続くため、稼働時期は見通せない。更田豊志(ふけたとよし)委員長は会合後の記者会見で、稼働までの手続きに「極めて長い時間がかかる懸念がある」と述べた。年単位を想定しているとみられる。
 核兵器に転用可能なプルトニウムの大量保有は国際社会から懸念を招きかねず、工場が完成しても、どれほど稼働できるかは不透明だ。プルトニウムを使うための高速増殖炉は、研究段階の原型炉もんじゅ(福井県)が廃炉となり、サイクル政策は実質的に破綻している。
 原燃は2014年1月に審査を申請した。耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度700ガルと想定。海抜55メートルにあり、津波の影響は受けないとした。再処理の工程で発生する溶液や廃液が蒸発し、放射性物質が拡散する事故などに備え、冷却設備や電源を強化したとしている。
 13日の会合では、規制委事務局の担当者が審査内容を説明し、5人の委員がそれぞれ重大事故対策などについて問いただした。最後に更田委員長が「審査結果に異存はないと考えてよいか」と問い掛け、委員から異論は出なかった。
 工場は1993年に着工。当初は97年の完成予定だったが、トラブルや東日本大震災の影響で完成時期が計24回延期された。原燃は現在2021年度上半期を目指している。総事業費は13兆9400億円に上る見通し。

<核燃料サイクル政策>原発の使用済み核燃料からプルトニウムやウランを化学処理(再処理)で抽出し、混合酸化物(MOX)燃料として再利用する政策。燃料の有効利用が目的で高レベル放射性廃棄物の量も少なくなるとされるが、中核となる再処理工場の完成が遅れ、各地の原発で使用済み燃料がたまり続けている。MOX燃料を使う高速増殖炉は、研究段階の原型炉もんじゅ(福井県)が廃炉となり開発が停滞。政府、電力業界は普通の原発でMOX燃料を使うプルサーマル発電を進めるが、東日本大震災以降、実施したのは四国電力伊方原発3号機(愛媛県)など4基にとどまる。

【解説】「核燃サイクル」必要性に疑問

 建設費は当初計画の4倍の約3兆円、完成延期は24回、着工して27年でも未完成-。原発の使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)。民間企業ならば断念していたはずの施設が、稼働の条件である原子力規制委員会の審査を事実上通過した。
 繰り返し核燃料を再利用できるかのように宣伝してきた「核燃料サイクル」という夢のような政策を実現する要の施設は、稼働の必要性に大いに疑問がある。
 東京電力福島第一原発事故後、54基稼働していた原発は廃炉が相次ぎ、規制委の審査で再稼働したのは9基。今後再稼働する原発が増えたとしても、再処理で取り出したプルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を使える原発は限られ、消費量が少ない。
 また、MOX燃料のみを使うはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉。再生可能エネルギーが台頭する中、政府は原発の新増設を打ち出しておらず、高コストのMOX燃料を使う経済性に欠ける。
 消費者が支払う電気代が元となった約14兆円という巨費が投じられてきた核燃料サイクルは、実現困難で破綻が明らかだ。
 ただ、再処理撤退も簡単ではない。最大の壁は、六ケ所村内に貯蔵されている大量の使用済み核燃料が「核のごみ」になること。青森県との取り決めで県外に運ぶ必要があるものの、各原発に置き場がなく、最終処分場は確保の見通しすらない。夢に固執したツケが重くのしかかる。
(小川慎一)

日本原燃「安全性向上対策を確実に現場に反映する」

日本原燃は審査書案が了承されたことを受けて、コメントを発表した。「当社といたしましては、 本日、審査書案が了承されたことは大きな 前進であり、 引き続き、 審査合格に向けて全力で 取り組 んでまいり ます。適合性審査でお約束した安全性向上対策を確実に 現場に 反映 し 、地域の皆さまにご安心していただける再処理工場を作り上げてまいります。」

パブコメは6月12日まで、規制委

 規制委は5月14日~6月12日、使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が新規制基準に事実上「適合」したことを示す審査書案について、国民から意見を募る。
 応募はインターネット、郵送、ファクスの3通り。いずれの場合も規制委のホームページの「手続き・申請」からパブリックコメントにアクセスし、「意見募集案件」から電子政府総合窓口のページに入る。ネットの場合はそのまま「意見提出フォームへ」をクリックし、必要事項を記入し送信できる。
 郵送やファクスは、電子政府総合窓口で「意見提出用紙」をダウンロードする。宛先は〒106-8450 東京都港区六本木1の9の9 六本木ファーストビル 原子力規制庁核燃料施設審査部門。ファクスは03(5114)2181へ。

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