ふくしまの10年 行ける所までとにかく行こう⑱ 戦車、使っていないのか

厚い装甲板による放射線対策への期待から、福島第一原発の事故収束作業には戦車まで用意された=広野、楢葉両町にまたがるJヴィレッジで(豊田直巳さん提供)

 東京電力福島第一原発の20キロ圏が立ち入り禁止となるまであと2日。2011年4月20日、写真家の豊田直巳さん(64)は、事故収束に当たる人員や資機材の中継拠点として使われていたサッカー施設Jヴィレッジ(広野、楢葉両町)に向かった。
 同施設内の駐車場で見つけたのが2両の戦車ともう1両の車両だった。「あ、これがニュースでやっていた戦車か。原発に投入されるって話だったが、もう使っていないのか」。詳しいことは分からなかったが、シャッターを切った。
 写真手前に写っている2両は74式戦車で、その奥のは78式戦車回収車。
 当時、作業の支障となっていたのが、水素爆発で飛び散った建屋の大量のがれきだった。現場の放射線量は高く、がれきには高濃度の放射性物質が付着しているおそれがある。
 そこで政府は、ぶ厚い装甲板により放射線の影響をある程度遮ることができ、車内を与圧することで放射能の流入を抑えることができる74式戦車に目をつけた。車体前面に排土板(ドーザ)を付け、ブルドーザーとして、がれき除去に使う予定だった。
 取材日の約1カ月前の3月20日、戦車などは静岡県の陸上自衛隊駒門駐屯地からJヴィレッジまでトレーラーで運ばれた。視界を確保するため、砲身の先端にミラーを取り付けた。原発への投入に備え、駐車場内でがれき除去訓練もしていた。
 しかし、福島第一1~4号機の建屋周りは狭い。敷地内には、既存の配線や配管のほか、事故後に仮設されたものも多くある。重く大きな戦車を不用意に動かせば、これらを切断してしまう可能性が高いと判断された。出番はないまま、5月3日から駐屯地に順次帰還していった。

ご意見・ご感想は

メールで、fukushima10@tokyo-np.co.jp へお寄せください。

関連記事