ふくしまの10年 行ける所までとにかく行こう⑯ だめです。Uターンして

福島第一原発前では、防護服に身を固めた作業員たちを乗せた車両が次々と通り過ぎた=大熊町で(豊田直巳さん提供)

 もっと近くから東京電力福島第一原発の状況を取材しておきたい。2011年4月18日、写真家の豊田直巳さん(64)は双葉町の堤防からさらに南下し、原発のすぐ近くまで進んだ。
 道路は所々で路肩が崩れるなどしていたものの、原発の敷地は一面に松林が広がり、植栽はきれいに刈り込まれている。まるで人影はなく、妙に静まり返っていた。とても目の前で、最悪レベルの原発事故が起きているとは思えなかった。
 松林の間から排気筒(高さ120メートル)の上部が見え隠れするほかは、建屋などはまるで見えない。
 だめだろうと思いつつ、正門で警備員に取材させてほしいと頼んだ。「だめです。ここでUターンしてください」。予想通りの答えだった。
 ここまで接近しているのに、何も撮れないのか。焦りつつ、正門の手前にある見学者用の施設「サービスホール」近くで撮影していると、次から次へと作業員を乗せたマイクロバスやバン、重機を載せた大型トレーラーが出てきた。
 車体やダッシュボードには「東京電力支援 緊急支援車両」の表示。ゼネコンの車両だった。作業員は全員、白い防護服に全面マスクのフル装備で、レンズを向ける豊田さんに手を挙げてあいさつする人もいた。
 原発の直近では事実上何も取材はできなかったが、やはり、この先は過酷な事故収束作業の現場なのだと認識し直した。
 その後、豊田さんが見た景色は現在、がらりと変わった。見学者施設は取り壊され、その周辺は新事務本館や作業員のための大型休憩所、緊急用のヘリポートなどになった。視界を遮っていた松林はほとんど伐採され、原子炉冷却で発生する高濃度汚染水を処理した水をためるタンク群の用地へと変わった。

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