たまる汚染水浄化の副産物 福島第一原発

 東京電力福島第一原発の汚染水浄化処理では、放射性物質トリチウムが除去できずに残る「処理水」に加え、放射性物質が濃縮された泥状の廃棄物なども「副産物」として大量に発生している。処理水は保管タンクの置き場に余裕がなく、政府や東電が海洋放出を軸に処分法を検討。一方、副産物の方も保管施設には限りがある。満杯になれば、汚染水処理が滞りかねない。
(宮尾幹成、小川慎一)

満杯になれば処理に支障

 福島第一原発1~3号機で1日に150トン前後発生する高濃度汚染水は、浄化処理して、一部は溶け落ちた核燃料(デブリ)の冷却に再利用。残りは敷地内のタンクで保管している。
 浄化処理には複数の工程があり、その全てで副産物の廃棄物が出続けている。いずれも放射性物質を含むやっかいなごみだ。
 まず、除染設備で放射性セシウムとストロンチウムを取り除く前に、汚染水に混ざった油分を分離する。
 当初の除染設備は、吸着剤を入れて放射性物質を泥状の「スラッジ」として沈殿させる方式。現在使われている設備は、吸着塔という円筒状のフィルターで放射性物質をこし取る仕組みで、使用済みの廃吸着塔が副産物として出る。
 次に、初期の事故対応で原子炉に注入した海水に由来する塩分を取り除く「淡水化」を行う。塩分が濃縮された廃液が発生する。
 最後に「多核種除去設備(ALPS)」で、トリチウム以外の大部分の放射性物質を分離。2段階の処理で、泥状の「スラリー」と廃吸着塔が廃棄物として出る。
 国の計画は、事故から30~40年後の2041〜51年に廃炉を終えるとしている。最終的には副産物も県外に持ち出す方針だが、処分先が見つかるかは不透明で、敷地内での保管が続く可能性がある。

置き場に限界 漏えいリスクも

 ALPSによる浄化処理で発生する「スラリー」は、高性能容器(HIC)と呼ばれる入れ物で保管しているが、既に置き場の8割以上が埋まっている。
 HICは耐久性を高めたポリエチレン製で、直径1.5メートル、高さ1.8メートル。1基に約2.6立方メートルのスラリーが入る。
 確保済みの4192基分の置き場に対し、4月23日時点で、3426基分のスラリーを保管。昨年の発生量は月平均28基で、資源エネルギー庁は「同じ傾向が続けば、2022年半ばには保管容量に達する」と試算する。
 ただ、東電は「6~7年は余裕がある」との見通しを示す。福島第一には、13年3月のALPS設置前にセシウムとストロンチウムだけを除去した状態の水が大量に残っていたが、それをALPSで処理する作業が今年8月ごろに完了する予定。その後はALPSの稼働ペースが下がり、HICの増加は月10基ほどに減る見込みという。
 また、東電は3月末、除染設備の廃吸着塔の置き場で使っていないスペースをHIC用に転用し、192基分を新たに確保する計画を発表した。
 HIC表面の放射線量は、最近の発生分では毎時0.1ミリシーベルト以下となったが、ALPS導入当初は毎時約14ミリシーベルトと高かった。
 高線量にさらされたHICの寿命は10年程度とされ、保管が長引けばスラリーの漏えいリスクが高まる。東電はスラリーの水分を抜く装置を造り、22年度中に稼働させる予定だ。
 計画では、装置の処理能力は1日当たりHIC3基分で、年600基分の処理を想定。ただ、トラブルに備えた予備系統は用意しない。東電は「連続運転が必要な装置ではなく、1系統で対応できる」と説明する。
 脱水済みのスラリーは、体積が3割程度に減ったケーキ状の固体廃棄物となり、別の容器で保管される。取り除いた水分は再びALPSで浄化処理する。

プロセス主建屋(赤丸部分)地下に貯蔵されている高濃度汚泥の高台移送は遅れている=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で、本社ヘリ「おおづる」から

高濃度汚泥の高台移動、設備設計が難航し2年遅れ

 原発事故当初の11年6月に321億円をかけて導入した仏アレバ社製の除染設備は、極めて高い濃度の放射性物質を含む泥状の「スラッジ」を発生させた。作業員の被ばく線量が大きいため、運転期間はわずか3カ月にとどまった。
 スラッジは、4号機南側にあるプロセス主建屋(海抜8.5メートル)の地下貯水槽に貯蔵しているが、再び大津波に襲われれば、海に流れ出すリスクを抱える。このため、東電はポンプでくみ上げて保管容器に入れた後、海抜25メートルの高台への移送を計画している。
 しかし、計画は思うようには進んでいない。東電は20年度内に移送を始める予定だったが、移送設備の設計が難航。2年程度遅れる見通しだ。建屋内の放射線量が高く、遠隔での作業が余儀なくされることが最大の障壁となっている。
 福島第一廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者は3月16日の原子力規制委員会の検討会で、「メーカーと設計をいろいろ詰めてきたが、どうしてもわれわれの納得いくような状態にならない。一回仕切り直すしかない」と説明した。

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