ふくしまの10年 行ける所までとにかく行こう⑩ さまよう動物たち

請戸(うけど)地区の津波被害を取材中、寄ってきたウシ=2011年4月1日、浪江町で(豊田直巳さん提供)

 2011年4月1日、浪江町請戸(うけど)地区で、津波被害を取材した写真家の豊田直巳さん(63)は、人間と離れた動物たちと出くわした。
 同地区でも津波は到達しなかった場所はある。崩れた石積みの倉や1階部分がそっくり崩れた鮮魚店などを撮影していると、1匹の犬が歩いてきた。
 少し前、革ひもを食いちぎって逃げたと思われる犬に出会ったが、この犬はひもが外されていたようだ。人間と離れて半月以上。人恋しいのか、ただ人懐っこいのかは分からないが、豊田さんに寄ってきた。パンをあげるとむさぼるように食べた。
 先に進もうと車に乗り込むと、犬まで車に乗ろうとしてきた。「申し訳ないけど、さよなら」。離れたので車を出したが、しばらく追ってきた。同じように、避難で残されたペットはたくさんいた。
 本紙が避難した浪江町民から聞いた話では、山側にある津島地区への1次避難までは、車でペットと一緒に逃げた人が多かった。しかし、バスで二本松市に2次避難する際、ペットは置いていくしかなかった。残された犬たちは群れをなし、住んでいた町に向かって戻っていったという。
 津波のがれき周りではウシの群れと出くわした。黒い肉牛で、子牛もいる。ノソノソと寄ってきたので、戦地取材を経験してきた豊田さんも少し怖かった。
 逃げたのか放されたのかもはっきりしないが、豊田さんは「地区内には、地震で屋根が崩れた牛舎があった。そこのウシだと思う」と話した。
 浜通りでは畜産が盛んだったが、避難時にウシを放した畜産家も多い。2012年ごろまでは、国道6号沿いに食べ物を求めてさまようウシの姿があった。その後、捕獲されて殺処分された。

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