ふくしまの10年 小高にあった「ラーメン大将」③車ごと津波に流されて…

原田さん夫婦と犬が避難した車は津波に流された=南相馬市小高区で

 「ウルトラマン見たことあります?」。南相馬市小高区の国道6号沿いで「ラーメン大将」を営んでいた原田幸子さん(64)は東日本大震災の津波が襲ってきた様子をそんな問い掛けから始めた。「怪獣が出る時に黒いぼこぼこの映像が出てくるでしょ。あんな感じ」
 地震の後、幸子さんは目が見えない夫の宗雄さん(76)と盲導犬のハーツとともに、店の駐車場にあった車に避難していた。あっという間に車は濁流に囲まれた。車やいろんなものが水に流されてきた。
 自分たちが乗る車もあっちこっちに流された。幸子さんは「今、物にぶつかるよ」と宗雄さんに逐一、状況を伝え続けた。「あの時は(幸子さんの)のどがやられちゃったね。俺は完全に諦めたよ」と、宗雄さんは当時を振り返る幸子さんを傍らでいたわった。
 車は、店近くの側溝にはまって動きを止めた。「店の駐車場には、アルバイトの子と一緒に整えた植え込みがあった。父親が植えてくれたサルスベリも。娘の夫が春になったらランを植えたいと準備していたハウスの骨組みもあった」。幸子さんは、それらが車が遠くに流されるのを防ぎ、自分たちの命を守ってくれたと感謝している。
 ガソリンスタンドから流されたタイヤにつかまって命をつないだ男性が、車から脱出してフェンスにつかまっていた幸子さんらを見つけてくれた。「犬の頭がぷかぷか浮かんでいるのに気がついたそうです」
 近くの公共施設に避難した幸子さんらを、市内に住む娘の亜希子さん(41)が迎えに来てくれた。福島第一原発事故が起き、娘の車で会津若松市に避難した。放射能検査を受けた後、体育館の廊下にハーツと家族は身を寄せた。「よその方の犬は外にいるので、遠慮してすみっこにいました」

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