汚染水問題の行方は? 事故10年目の福島第一原発

 東京電力福島第一原発では、放射性物質を含む汚染水の発生が続いている。浄化処理施設は整ったが、処理後の水は113万トンに上り、保管するタンクは1000基を超えた。東電と政府はタンクの敷地が限界として、水を処分する検討を本格化させている。事故発生から10年目に入り、汚染水を巡る問題は大きな節目を迎えつつある。
(渡辺聖子、写真は山川剛史、空撮は坂本亜由理)

タンク約1000基が立ち並ぶ福島第一原発=福島県大熊町で(本社ヘリ「おおづる」から)

 東京ディズニーランドの7倍、約350万平方メートルと広い原発の敷地。1月27日、敷地南側では作業員が鉄板を溶接し、タンクを組み立てる姿があった。1基の高さと直径は12メートル。完成すると、1350トンの水が入る。敷地を目いっぱい利用するため、タンクは1メートル余りの間隔で蜂の巣状に配置していく。この光景が見られるのも、それほど長くはなさそうだ。
 東電は保管する水が増えるにつれて敷地の木を伐採し、用地を確保してきた。今年末までに計137万トン分のタンクを建てる。しかし、その先の増設は、事故収束作業に必要となる施設整備を理由に「限定的だ」と繰り返す。2022年夏ごろには、タンクは満杯となる見通しという。

保管水7割は基準超、処分なら再浄化必須

 タンクの建設用地と容量が限界に近づく中、政府の小委員会は2月、浄化処理した水の処分について、海と大気への放出を提言し、「海洋放出」が他の原発などで実績があると利点を並べた。国は地元の意見を聴いてから方針を決める予定で、東電はその方針に沿う姿勢を示している。
 海洋放出には、漁業者が強く反対している。魚介類に含む放射性物質を検査しながらの試験操業は、着実に漁獲量を伸ばしてきた。福島第一から水が海に捨てられるとなれば、漁業にとっては大打撃になり得る。
 汚染水は浄化処理をしても、放射性物質トリチウムは除去できない。さらに保管されている水の約7割は十分に浄化されていないため、トリチウム以外の放射性物質も国の基準を超える濃度で残っている。
 東電は、水を処分する際には再浄化の方針を示している。福島第一廃炉推進カンパ二ーの小野明・最高責任者は「現在の処理施設の能力で再浄化は可能」と話すが、実績はなく、効果のほどは分かっていない。

<トリチウム>放射能を帯びた水素で、酸素と結合してトリチウム水になる。普通の水と分離するのは難しく、汚染水を浄化している多核種除去設備でも取り除けない。放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出される。放射能は12.3年で半減

処分方針巡り意見聴取、福島で4月6日から

 政府は汚染水を浄化処理した後の水の処分方針の決定に向け、4月6日に福島市内で自治体や業界団体などから意見を聴く会合を開く。福島県内外で複数回にわたって会合を開く見通し。福島県以外での開催場所や回数は検討中という。梶山弘志経済産業相が3月17日の記者会見で明らかにした。
 梶山氏は「関係省庁が一体となって幅広い関係者の意見を聴き、結論を出す。スケジュールありきではない」と強調。また東電に対し、政府小委で有力とされた海洋や大気への放出について技術的な素案を会合前に示すようにも求めた。
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、一般の人がインターネットで傍聴し意見を寄せられるような対応も検討しているという。

2020年3月18日こちら原発取材班紙面

処理水の海洋放出に「反対」、浪江町議会が全会一致で決議

 東京電力福島第一原発で増え続ける処理水の処分を巡り、福島県浪江町議会は3月17日、海洋放出に反対する決議を全会一致で採択した。同町は第一原発に近い沿岸部に位置し、原発事故前は漁業が盛んだった。処理水に関して地方議会で反対決議が採択されたのは初めて。
 同原発で出た汚染水を浄化した処理水には放射性物質トリチウムが含まれる。処理水の処分は海洋放出がより確実に実施できるとした政府小委員会の報告書に対し、決議は「漁業再開の努力に水を差す」「地域住民の感情を無視し、被災者にさらなる苦痛を強いる」と批判。「今なお残る風評被害に何ら対策もないまま放出すれば町の存続に関わる」と強調した。
 「漁業の全面再開を目前にしたこの時期に、保管が限界に近づいたとの理由で安易に海洋放出すれば、さらなる風評被害を招く」としてタンクで保管を継続しトリチウムを除去する技術開発を急ぐべきだと訴えた。浪江町は町面積の約8割が今も帰還困難区域に指定され、居住者は原発事故前の人口の約6%に相当する約1200人にとどまる。(共同)

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