ふくしまの10年 詩になったアナウンサー⑩ 学生と福島第一原発へ

福島第一原発を見学する大学生たち

 大和田新さん(64)はラジオ福島を2015年に定年退職し、フリーアナウンサーとなった。番組を続ける一方で、福島大学の教壇に立ったり、各地で講演活動をしたりした。
 ユニークなのが大学生の原発見学会だ。ほぼ毎月、学生3人ぐらいをマイカーに乗せて東京電力福島第一原発や第二原発に向かう。すでに30回近い。学生は関東や関西からも来る。
 きっかけは当時、福島大生だった上石(あげいし)美咲さん(23)が「見たい」と言ったことだ。上石さんは大学1年のとき、福島県が特産品のモモをPRするミスピーチに選ばれた。首都圏で試食販売の際、福島産だと告げたら口の中のモモを吐き出す女性がいた。ショックを受け、もっと原発事故を知ろうと考えたという。
 上石さんは大和田さんのラジオ番組で「第一原発はひどいところだろうと思っていたが、多くの地元の人が廃炉に向けて頑張っていた」と感想を語った。
 疑問をストレートにぶつける学生たちを大和田さんは頼もしく見ている。こんなやりとりもあった。
 大学生が「今、津波が来たらどうなるんですか。作業している人は死んじゃいませんか」と尋ねた。
 東電の担当者が「同規模の地震、津波にも耐えられる防潮堤を造ったので大丈夫」と答えると、学生は「もっと大きな津波が来たらどうするんですか。震災のときも想定外と言ったじゃないですか」と再質問。担当者は答えられなかった。
 大学生には「原発に賛成か反対かというので見てもらうんじゃない」と話しているという。「われわれの世代が事故を起こして若い人に負の遺産を押しつけているんじゃないですか。一緒に考えてくれ、という気持ちです。今後、何を電源とするかは若者が判断すべきだ」

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