ふくしまの10年 詩になったアナウンサー⑥ 駐在さんの行方

津波に巻き込まれたパトカー。警察官2人が亡くなった=福島県富岡町で

 ラジオ福島(福島市)では東日本大震災前から毎週土曜日の午前中に「ラヂオ長屋」という番組を放送している。大和田新さん(64)と女性アナウンサーが担当する生番組だ。
 第1土曜日に「我がまち駐在さん」というコーナーがある。福島県内の駐在所に電話して駐在のお巡りさんとその夫人に話を聞く。だいたい、6割ぐらいは夫人が話すという。
 震災の前の週、2011年3月5日は、相馬市磯部にある磯部駐在所だった。赤ちゃんがいると聞いた。11日夕から徹夜で放送している大和田さんの手元に被災情報のメモが入った。
 「相馬市磯部地区、壊滅」。大和田さんは叫んだ。「壊滅って、みんな死んでいるってことだぞ。そんなの、読めるか」。
 殉職したり、行方不明になったりした警察官の中に、その名はなかった。何年もたってから、大和田さんは家族に磯部まで来てもらい、取材した。
 地震発生時、夫は相馬警察署にいて無事だった。戻ると駐在所の建物は津波で流出し、流木やがれきに阻まれて近づくこともできなかった。ぼうぜんとしているとき、自治会長が声をかけた。
 「奥さんたちはうちに避難している」
 地震直後、避難を勧める自治会長に、夫人は「駐在所を離れるわけにはいかない」と言い続けた。自治会長は高台にある自宅に引きずるようにして避難させたという。
 大和田さんはこのエピソードを紹介するとき「地域の力が大事ですね」と付け加える。
 県警の殉職警察官は5人。住民を避難させるため、危険な場所に向かった人たちだった。大和田さんは最期の状況を伝えるだけなく、亡くなった場所を今もしばしば訪ねている。  

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