再生エネを首都園へ<地球異変 挑戦する福島>

 かつて水田だった場所に敷き詰められた太陽光パネルの向こうに、鉄塔と電線が張り巡らされた場所が見える。東京電力福島第一原発から南西に約9キロ、福島県富岡町の山沿いに東電の新福島変電所がある。原発事故前までは、原発からの電気を首都圏に送り続けた拠点。その電気が今、太陽光と風力という再生可能エネルギーに代わった。

太陽光パネルと山に囲まれた新福島変電所(右中央)。太平洋岸に見える福島第二原発(右上)は震災で津波被害を受け、廃炉が決まった=2020年3月6日、福島県富岡町で、本社ヘリ「おおづる」から(淡路久喜撮影)

福島・富岡町の新福島変電所

 新福島変電所は今年一月、県内の再生エネ発電所とつなぐための改修工事を終えた。福島第一が立地する双葉町など沿岸部の太陽光、風力発電所計二十カ所とつながり、最大四十万キロワットを受け入れる。一般家庭十二万世帯の年間使用量に相当する電気だ。
 原発事故前、十基が稼働していた福島の原発は発電を止め、廃炉完了までの長期にわたって大量の電気が必要となった。福島第一は事故収束作業が続き、福島第二原発は昨夏に廃炉が決まった。
 東日本大震災で被害を受けた変電所は、福島第一の原子炉冷却などに必要な電気を送る役割を果たせなかった。事故から九年、首都圏だけではなく両原発にも電気を送る変電所は、福島の光と影をつなぐ結節点だ。 (渡辺聖子)

 大震災と原発事故から9年、未曽有の災害を経験した福島県は、地球温暖化を抑制するために普及が不可欠な再生エネの拠点に変わろうとしている。その取り組みと課題を追う。

再生エネ100%へ 住宅太陽光推進

 「2040年をめどに、県内のエネルギー需要の100%以上を再生可能エネルギーで生み出す」。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で大きな被害を受けた福島県は、震災翌年の12年にそう目標を掲げた。
 県によると、18年度の再生エネの割合は31.8%。6年間で10ポイント上昇という想定を超える伸びを支えたのは太陽光発電だ。津波被災地や放射能で汚染された田畑が大規模太陽光発電所(メガソーラー)の敷地となり、再生エネの固定価格買い取り(FIT)制度も追い風となった。
 しかし、買い取り価格が高値に設定されたFITは順次終了を迎え、県エネルギー課の担当者は「潤沢に用地があるわけではない」と話す。メガソーラーのために山を切り崩して土砂災害の危険性が増し、環境問題にもなっており、風はやみつつある。

 県が、期待するのは住宅の屋根に設置するタイプの太陽光発電。国の住宅・土地統計調査(18年度)によると、県内住宅の太陽光発電普及率は5.6%と伸びしろがある。担当者は「防災の観点からも、住宅の屋根への普及を進めたい」と話す。
 風力発電は21年以降、9カ所の稼働を見込む。ただ、震災後に国費585億円が投じられた洋上風力発電の実証実験は苦戦。楢葉町の沖合20キロで土台を浮かべる「浮体式」の風車3基が建てられたが、最も大きな出力を持つ1基は不具合が頻発し、18年夏に撤去が決まった。
 残り2基の扱いは、あと1年の試験運転を続けた後に決まる。沿岸の水深が深い日本にとって、浮体式の洋上風力は期待の星。福島での成功の可否が、日本の再生エネ普及の鍵を握る。

汚染土運搬 CO2年4万トン

 福島県沿岸部の浜通り地域を南北に貫く国道6号と常磐自動車道に、3年ほど前から、10トンダンプが頻繁に行き交うようになった。
 荷台に積まれているのは福島県内全域の除染で出た汚染土。各市町村の仮置き場から連日、福島第一原発を取り囲むように造られた中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に運んでいる。
 1600ヘクタールという広大な敷地で、汚染土から草木などと分別する施設や焼却施設が順次稼働。環境省によると、19年度の運搬量は400万トンに上る。1日当たり2400台のダンプが中間貯蔵施設内に入り、同省は「土を積んだ状態で二酸化炭素(CO2)排出量は年間4万トン」と推定。一般家庭1万3000世帯以上の排出量に相当する。ただ復路は推計しておらず、焼却施設も含めれば実際の排出量はもっと多い。

国道6号では、中間貯蔵施設へ向かう汚染土を荷台に積んだ大型ダンプが列をつくる光景が当たり前となっている=福島県浪江町で

 事故収束作業が続く福島第一では、膨大な電気を消費している。原子炉建屋への地下水流入を防ぐために地中を凍らせて造った「凍土遮水壁」だけでも、年間で一般家庭5400世帯分が使う電気を使っている。
 こうした電気をつくるために、石炭や天然ガスなど化石燃料での発電がたき増しされてきた面がある。温暖化につながる温室効果ガスを出さないとされる原発だが、一度事故を起こせば大量なCO2排出をもたらしてもいる。

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