温暖化阻止に若者動く 学生気候危機サミット

 異常気象が常態化し、暮らしを脅かしかねない地球温暖化。それを食い止めようと、若者たちが動きだした。東京・渋谷で2月21~23日に開かれた「学生気候危機サミット」には、全国から高校生や大学生ら約100人が参加。政治家や行政、企業、学校に温暖化対策の徹底を働きかける方法を、3日間かけて考え合った。(福岡範行、渡辺聖子)

行政や企業、学校にどう働き掛けるかを話し合う参加者たち=いずれも東京都渋谷区で

渋谷で3日間 具体策探る

 渋谷駅から徒歩5分、ビル内にあるイベント会場。参加者は車座でグループ別にワークショップを行い、かたわらにはペットボトルではなく、それぞれの水筒を置いていた。初日は昼から夕方まで、各地のデモの掛け声を紹介したり、新しい掛け声を作ったりした。
 2日目は朝10時から夕方まで、温暖化と政策について基礎知識をたっぷりと学習。国立環境研究所の江守正多さん、非政府組織(NGO)「気候ネットワーク」の桃井貴子さんらが講師を務め、夜のパーティーでは肉や乳製品を使わないビーガン(完全菜食主義)料理を、それぞれが持参した箸と器で楽しんだ。
 3日目は、環境問題や政治参加への運動を続ける先輩たちが経験談を紹介。その後、4月までに取り組む具体的な活動内容を話し合い、一人一人が自らの「行動宣言」をつくった。

FFF東京発足1周年を記念したパーティーも開催。ビーガン料理が並んだ

 社会を動かす具体策の発表では、多彩なアイデアが飛び出した。企業への行動を考えたグループは「東京ディズニーランドにRE100に加盟してもらう」を提案。RE100は、事業に使うエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う取り組み。「幅広い層が知るディズニーが取り組めば、大きな影響がある」と期待した。
 高校生や大学生向けには「 校内の中庭でランチしながら環境について話すピクニックキャンペーン」や「新入生歓迎ブースでビーガン料理を出す」など、環境問題を考えるきっかけを増やす案があった。
 主催は、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17)の運動に触発された活動「Fridays For Future(未来のための金曜日、FFF)東京」とNGO「Climate Youth Japan」、若者の政治参加を呼び掛ける「NO YOUTH NO JAPAN」の有志。企業に協力を求め、アウトドアウエアブランド「パタゴニア」など5社が協賛した。

気候変動問題に立ち向かうことを誓い合って、最後に記念撮影した参加者たち

「エシカル就活」実現を提案

 立正大3年小出愛菜さん(21)=埼玉県所沢市=たちのグループは、環境に配慮した「エシカル(倫理的な)就活」の実現を提案した。4月までに、再生可能エネルギーだけを使う企業と環境問題に関心のある就活生を集めた百人規模の企業説明会を開きたい、と宣言した。
 小出さんは就活を間近に控え、「環境を意識して企業選びをする学生たちがいるんだと伝えたい」と考えてきた。気候変動対策の強化を街頭で訴える全国各地の「気候マーチ」に、リクルートスーツで行くことも提案。マーチで一般的な段ボールのプラカードをスーツ姿で持つことで人目を引き、地元の企業にアピールするアイデアだ。
 エシカル就活の取り組みは来年や再来年も続け、規模を拡大していくことを目指す。小出さんは「新しい就活のスタイルをつくりたい」と語った。

環境保護に取り組む企業と環境問題に関心がある学生だけを集めた就職説明会を提案する参加者

遅刻の言い訳「気候マーチ参加」に

 筑波大付属駒場高1年坂本亮さん(16)=東京都武蔵野市=は自らの「行動宣言」で気候マーチに参加する同級生を増やすことを掲げ、「マーチに参加したから塾に遅れました」キャンペーンを発案した。「宿題が終わらない」などと進学塾に遅刻する友人らをよく見かけるといい、「同じ遅れるなら、マーチだからの方がかっこよくない?」とアピールする作戦だ。
 坂本さんは国際協力機構(JICA)のイベントで途上国の貧困などを学び、気候変動による食糧危機でも貧困問題が起きていると知り、危機感を抱いた。
 遅刻の言い訳を変える活動を通し、社会問題を意識する同級生を一人でも多くしたいという。坂本さんは「敷かれたレールのまま『塾に行かなきゃ』と考える人は多い。その塾に気候マーチが勝ったら、大きな価値観の転換があると思うんです」と力を込めた。

塾の遅刻の言い訳を「気候マーチに参加したから」に変える活動を提案する坂本亮さん

再エネで福島のイメージ変える 郡山の高2 吉田幸希さん(17)

 再生可能エネルギーへの転換で地球温暖化への対策を進め、東京電力福島第一原発事故が起きた福島のイメージを変えたい−。強い思いを抱き、今回のサミットに臨んだ。
 原発事故時、小学2年生。地元の福島県郡山市から前橋市へ半年、原発から約1000キロの岡山県へは3年間、母と弟の3人で避難した。避難先で同級生から「福島って住めるの?」などと言われ、嫌がらせやいじめを受けた。「福島に住んだのがいけないのか」と悩んだ時期もあった。
 郡山へ戻り、高校1年の夏に転機が訪れた。「脱原発」を目指すドイツに留学し、再エネへの関心が高まった。2年の夏には米国留学で、リーダーシップについて学んだ。昨年10月、エネルギー問題や気候変動を考える活動「ふくえねラボ」を一人で始めた。友人らに声を掛けてこれまでに3回開き、今後は首都圏での開催も考えている。
 自分の体験を語ると、多くの人が関心を持ってくれた。大学生との議論では、物の見方や考え方に刺激を受けた。地域が違っても同じ目的に向かってる人たちと出会えたことは大きい。互いに刺激し合える、いいライバルができた。
 最終日に発表した「行動宣言」は、「郡山でラーメン店の割り箸をゼロにすること」。マイボトルからヒントを得た。マイ箸を持ってラーメンを食べに行く人を郡山から増やしていく。

地元の福島県で取り組みたい活動を宣言する吉田幸希さん

得意を生かし合っていく 金沢大2年の長谷川日菜さん(19)

 出身地の長野県では、昨年の台風19号で千曲川が氾濫した。台風に強いと思っていたので、「どこにも住む場所がなくなるんじゃないか」と不安になった。想像を上回る自然災害が今後あり得ると思う。
 温暖化対策の推進を求める運動「グローバル気候マーチ金沢」に、2月に加わったばかり。同年代は少なく、主婦層が中心。金沢で若者主体のFFFを作りたい。若者から動けば、社会人になった後も含めて「これから」を変えていける。
 掛け声を考えるのは楽しかった。盛り上げるのが得意な人、発信は得意ではないけど知識があって考えるのが得意な人、一人一人の強みが生かされて作った掛け声だと思う。得意を生かし合って取り組めばいいんだと、ポジティブな気持ちになれた。

参加者と感想を語り合う長谷川日菜さん(中央)

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