<東海第二原発 再稼働再考>国際環境NGO事務局長・満田夏花さん「東電の支援は背任行為」

 東京電力が2019年年10月、日本原子力発電(原電)東海第二原発の再稼働に必要な資金支援を正式に決めた。福島第一原発事故で多くの人がふるさとや生きがいを失っている中で、東電が出したお金が原発再稼働につながるというのは、事故の被害者への裏切り行為だ。
 東電は、自力では被害者への賠償や廃炉の費用を賄えず、国や他の大手電力会社から巨額の資金を注入され、形だけ破綻を免れている。賠償や廃炉に専念すべきで、他社の再稼働を支援するのは許されない。
 資金支援は、東海第二が再稼働した後に発電する電気を前払いで買う形で実行される。東電の説明では、買った電気を売って収益を上げ、賠償に充てるという。
 だが、原電が所有する原発は2011年度以降、1基も動いていない。赤字額は平均17億円で、原発以外に発電手段を持たない原電は倒産してもおかしくない状況だ。

国際環境NGO事務局長・満田夏花さん

 さらに東海第二の事故対策費は、原子力規制委員会の審査段階では1740億円とされていたが、3500億円まで膨らんだ。仮に再稼働しても、その電気はとてつもなく高くつくと予想される。このような電気を前払いで買うのは、賠償や廃炉の費用を負担する国民や電力消費者にとっても背任行為だ。
 全く発電していない原電が生き延びているのは、大手電力各社から巨額の「基本料金」を得ているからだ。東電の支払額は最も多く、11~18年度で総額3713億円に上る。東電は経営合理化を言うなら、不当な支払いは即刻やめるべきだ。やめようとした時期もあると聞くが、原発を推進する国の意向には逆らえないのかもしれない。
 東海第二は東日本大震災で外部電源を喪失し、3日以上かかってかろうじて冷温停止した。強い揺れによる被災を全て確認できているわけではない。30キロ圏に90万人以上が暮らし、実効性ある避難計画の策定も不可能だ。
 近くに日本原子力研究開発機構の東海再処理施設をはじめ、多くの原子力施設があるのも心配だ。規制委の審査では、東海第二の事故が再処理施設にどう影響するか、その逆はどうかといったことは見ていない。
 国が原発にしがみついているために、多くの人が「原発反対」と言い続けなければならないのは、社会的コストだ。原発反対運動をしなくて済めば、再生可能エネルギーの出力調整や送配電網の適正な運用といった前向きな議論がもっとできる。(聞き手・宮尾幹成)

<みつた・かんな> 1967年、東京都東久留米市出身。東京大卒業後、地球・人間環境フォーラム主任研究員を経て、2009年に国際環境NGO「FoE Japan」へ。3.11後は原発事故被害者の権利や生活再建、エネルギーに関する政策提言に取り組む。脱原発社会を目指す民間シンクタンク「原子力市民委員会」の座長代理も務める。

東海第二原発とは?

 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給していた。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
 2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。再稼働の対策工事は21年3月までかかる見込みで、資金支援のため、東京電力などが約3500億円を拠出する構図も固まった。再稼働には、東海村や水戸市など6市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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