伊方3号機差し止め、規制判断にまだ疑義

 広島高裁が2017年に次いで再び仮処分決定で、原発の新規制基準に適合して再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転禁止を命じた。地震を引き起こす活断層と火山噴火の危険性を巡り、電力会社の想定や対策を十分とした原子力規制委員会の判断を「不合理」とし、規制委の審査に疑問を呈した。(小川慎一、渡辺聖子、福岡範行)

審査見直さず

 「規制委としては新規制基準に基づいた審査を適切に行っている。内容の見直しはございません」
 高裁決定が出た30分後の1月17日午後2時半、東京・六本木のビルに入る規制委の記者会見室で、定例会見に応じた規制庁の児嶋洋平総務課長は「決定内容を承知していない」と前置きしながらも、「基準に関しても見直す必要はない」と言い切り、かたくなに審査の正当性を主張した。
 今回の高裁決定では、伊方原発から約130キロにある熊本・阿蘇山の噴火による影響が問題となった。17年に運転禁止命令を出した広島高裁の決定は、1000万人を超える死者を出すような破局的な大噴火があった場合に、高温の火砕流が伊方原発に到達する可能性があると指摘した。
 今回の決定は、17年決定を覆した18年9月の広島高裁決定同様、破局的な大噴火の可能性は低いとした。その一方で、破局的噴火に至らない最大規模の噴火の想定が過小と、リスクの見積もりの甘さについて言及。四国電力の想定に疑問を示さなかった規制委の判断を批判している。

他訴訟に追い風

 阿蘇山から同じような距離には、再稼働している九州電力の玄海原発3、4号機(佐賀県)と川内原発1、2号機(鹿児島県)がある。高裁決定は他の原発には触れなかったものの、これらの運転禁止を求める訴訟への波及が予想される。
 さらに今回の決定は、活断層の調査が不十分とも指摘した。四国電の主張を受け入れた規制委の判断は誤りだと、繰り返し断じた。原発停止を求める住民側はほとんどの訴訟で「規制委の審査は合理的」とされて敗れてきた。政府は審査の前提となる新基準を「世界一厳しい」と強調するが、司法の場で審査の不十分さを突く流れが、他の訴訟でも強まりそうだ。

長期停止

 伊方3号機は2019年末に定期検査に入り、停止中。四国電は4月27日に検査を終え、営業運転を再開する予定だった。高裁決定は運転禁止の効力を、住民たちが山口地裁岩国支部に起こしている運転差し止め訴訟の判決言い渡しまでとしている。地裁支部での審理は続いており、仮処分決定が覆されない限り、停止が長期間になるのは必至だ。
 四国電は来週にも広島高裁に不服を申し立てる見通し。17年12月に広島高裁で運転禁止の仮処分決定が出た際には、同高裁に異議を申し立てると同時に、仮処分の執行停止も求めた。その結果、18年9月に同高裁が再稼働を認め、18年10月に運転を再開した。
 四国電が同様の手続きを取った場合、今回の決定を出した森一岳裁判長は1月下旬に定年退官するため、別の裁判長が審理する見通し。異議が認められれば、運転禁止は解かれる。

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