<東海第二原発 再考再稼働>茨城大教授・渋谷敦司さん 住民意識「共存できない」 

 作業員2人が犠牲になった1999年のジェー・シー・オー(JCO、東海村)臨界事故から毎年、周辺住民の原子力に対する意識の変化を調査してきた。2010年以降は、東海第二原発の再稼働についての意識調査を昨年まで続けた。その途中の11年に3.11の震災が起きた。
 JCO事故の後、首長も含めた住民の意識は、従来の「原発は不安だが必要なんだろうな」から「相当なリスクを抱えているが、防災対策や安全対策を十分にやれば共存していける」に変化した。3.11を境に「やっぱり共存はできない」と大きく見方を変えた住民が多数派になった。

茨城大教授・渋谷敦司さん

 国も電力会社も、最終的には地元自治体の同意を得た上で再稼働すると言っている。首長たちは、同意するかどうかは住民意思を踏まえて判断すると口をそろえている。
 私の調査については、前知事も現知事も「あくまで茨城大の調査結果にすぎない」との立場。それなら県が毎年やっている県政世論調査で質問項目に東海第二の再稼働の是非を入れればよい。一項目追加するだけだから、お金もかからない。県民レベルの意思を確認する一番簡便な方法だ。
 東海第二の30キロ圏に入る那珂市が16年度に取り組んだ住民意識調査では、再稼働に賛成か反対かの二択で、反対が圧倒的多数だった。他の自治体でも調査すれば、おそらく似たような結果が出るはずだ。
 むしろ原発から離れた市町村ほど、議会が再稼働反対などの意見書を可決している。福島の原発事故を経験した日本全体の世論にも近いと思う。それを踏まえた政策決定を考えれば、国のエネルギー政策は脱原発という方向に行かざるを得ない。
 選挙では、原発再稼働に対する民意はすくい切れていない。有権者は原発のことばかり考えて日常生活を送っていないし、政治家が原発を争点にしないような選挙戦略を取っている面もある。周辺自治体では、脱原発の人も当選するためには争点にしたくないという意識になりがちだ。
 ただ、今春の水戸市議選では、保守系とみられている候補者が再稼働反対を公約したケースがあった。その方が票が入ると踏んだのかもしれないが、原発に対する市民の意識変化を保守系の人たちも無視できなくなっていると思う。
 過疎地の原発なら動かして構わないということではないが、東海第二のように周辺人口が多ければ、実効性ある避難計画の立案が非常に難しいという問題がある。計画を作らされている周辺市町村の担当者が一番よく分かっている。国は全面支援すると言っているが、客観的に無理だ。(聞き手・宮尾幹成)

<しぶや・あつし> 1957年、東京都板橋区生まれ。茨城大人文学部(現・人文社会科学部)講師、助教授を経て99年に教授。専門は地域社会学、家族社会学、ジェンダー論。共著に「ポスト震災社会のサステイナビリティ学」。2010~16年度と18年度に、東海第二原発の周辺住民4000人を対象に意識調査をした。

東海第二原発とは?

 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給していた。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
 2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。再稼働の対策工事は21年3月までかかる見込みで、資金支援のため、東京電力などが約3500億円を拠出する構図も固まった。再稼働には、東海村や水戸市など6市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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