福島第一 核燃搬出開始、最大5年遅れ

 政府は12月27日、東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策の関係閣僚会議で、1、2号機の使用済み核燃料プールにある燃料の搬出開始を、現行の2023年度から最大5年遅らせることを正式決定した。廃炉作業の最難関である溶融核燃料(デブリ)取り出しを2号機から21年中に始める方針も確定し、廃炉工程表「中長期ロードマップ」の5回目の改定をした。

事故収束作業が進む東京電力福島第一原発。右から1、2、3、4号機

2号機で21年からデブリ取り出し計画

 プール燃料搬出は廃炉作業の主要工程の一つで、炉心溶融を起こした両機の開始時期の見直しは4度目。事故後30~40年とする廃炉完了目標は維持したが、放射線対策など難題が山積しており達成への影響が懸念される。改定では他に、汚染水発生量を25年までに1日当たり100トン以下に減らすことも盛り込んだ。
 会議で菅義偉官房長官は「廃炉を確実に成し遂げるべく対策を進めてもらいたい」と求めた。梶山弘志経済産業相は記者会見で、搬出遅れを「安全を第一に考えて見直した。しっかり目標を持って取り組む」と述べた。
 工程表改定を受け記者会見した東電担当者は「個別では遅れもあるが全体の廃炉作業は進んでいる」とし、現時点で廃炉完了目標を変える必要はないとの考えを示した。
 1号機のプール燃料搬出開始は27~28年度、2号機は24~26年度に遅らせ、いずれも2年程度かけて搬出を終える。放射性物質の飛散抑制強化のためで、1号機建屋では新しく設置する大型カバーの完成が23年度ごろの見通し。2号機も、搬出機器などの収容設備の新設や、建屋内の除染に時間がかかると判断した。
 31年までに1~6号機全基のプール燃料計4741体の搬出完了を目指すことも明記した。事故当時に定期検査中だった4号機では全燃料の搬出を終えている。炉心溶融を起こした3号機は19年4月に搬出作業が始まった。5、6号機の搬出開始時期は未定。
 2号機のデブリ搬出は少量から着手し、10年後の31年までかけて規模を拡大する。残る1、3号機での搬出の開始時期には触れなかった。

「ゴール」示せず

 政府と東京電力が福島第一原発の廃炉工程表「中長期ロードマップ」を改定した。30~40年で廃炉を完了する目標は維持したが、取り出したデブリはどうするのか、建屋や施設は全て解体するのかといった具体的な「ゴール」の姿は示せないまま。事故から9年近く避難を続ける地元住民は、目標の実現性に疑念を抱く。

順調さ強調

 2017年9月の前回改定後、廃炉作業での大きな進展は、19年2月に2号機原子炉格納容器内でデブリとみられる堆積物に接触できたことだ。これを受け、今回の改定でデブリ取り出しを21年に2号機で始めると盛り込むことができた。
 溶けた核燃料がどこに落ち、どのような性質、形状をしているのか。実態の解明は作業の行く末を左右する。「今後、デブリ取り出しでサプライズはないだろう」と経済産業省幹部は手応えを強調。8兆円と試算された廃炉費用の上振れも懸念されていたが「想定内に収まりそうだ」と話した。

「原子炉施設の解体」消え

 一方、2011年12月の工程表策定時に明記されていた、取り出し後の「原子炉施設の解体」は今は消えている。
 12月27日記者会見した東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は「(廃炉の)最終形は絞り込めないというか、いろいろな人の意見がある。今の段階で決められない」と言葉を濁した。
 第一原発ではデブリ以外にも放射性廃棄物が膨大に発生するが、処分先や方法は未定のまま。廃炉の最終形を具体的に示すにはこれらの難問に道筋を付ける必要があるものの長期化は必至で、30~40年の完了目標が揺らぎかねない。現時点では廃炉後の議論を先送りしたい政府や東電の思惑が透けて見える。

目立つ甘い想定

 第一原発ではミスや想定の甘さによる作業の延期や長期化が目立つ。最初の工程表では14年末ごろ始める計画だった3号機の使用済み燃料搬出は、ようやく19年4月に着手した。1、2号機も延期を繰り返し、工法の大幅変更などでさらに最大約5年遅らせた。
 第一原発が立地する福島県大熊町から同県会津若松市に避難している無職男性は「そんなうまくいくわけないと思っていた。30~40年という目標も誰も信じていないだろう」と冷めた視線を向ける。
 大熊町は19年4月に一部の避難指示が解除されたばかり。20年3月には双葉町の一部で初の解除を控える。男性は「町民は廃炉の進み具合と帰還の判断は切り離して考えている。むしろ遅れてもいいので安全に事故のないよう進めてほしい」と話した。

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