<東海第二原発 再考再稼働>日本医師会元会長・原中勝征さん「『除染すれば大丈夫』は間違い」

 東海第二原発の再稼働に反対する市民集会が、11月16日に茨城県東海村で開かれた。私も賛同人として参加した。もし東海第二で事故があれば、広い範囲で人が住めなくなる。四季折々の風景があり、海の物も山の物も食べられる日本の素晴らしい国土を子孫に残す義務が、今を生きる者にはある。
 日本医師会長を務めていた2011年3月に、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた。医師会は、福島県を含む被災地に医療チームを送る活動を一年間続けた。
 私は(福島第一がある双葉町の北隣で大部分が帰還困難区域になった)浪江町の生まれ。高校時代、授業が休講になった時に、みんなで釣りに行っていた場所に原発ができた。福島の事故後、除染がある程度進んだところで、妻と浪江の町を見に行った。除染土を詰めた袋が山積みで、あんなにたくさんどこに持って行くのかと心配になった。古里を失ったさみしさは言葉では説明できない。

日本医師会元会長の原中勝征さん

 旧ソ連・チェルノブイリ原発事故では、半径30キロ圏内の住民を強制移住させた。30年以上たった今でも、あの区域は立ち入り禁止のままだ。だが日本では「除染したから大丈夫」と言って、国民を危険なところに住ませようとしている。絶対に間違いだ。
 地震や津波だけなら、犠牲者が出てもいずれは復興できる。しかし放射能汚染は違う。農業も、帰ることすらできなくなる。福島では、子どもの甲状腺がんが出ている。これからさらに増えるだろう。
 国土の狭い日本では、原発が二つ爆発したら住むところがなくなる。日本人は流浪の民になってしまう。しかも、放射能を浴びた子どもはがんになるかもしれない。原発再稼働を進める人たちは、それでいいのか考えてほしい。
 もちろん工業を盛んにやるために電力は必要だ。だが福島の原発事故の後、原発が全く稼働していない時期でも電力は足りた。太陽光、風力、地熱などの普及を進めれば、電気は十分に足りる。
 どうして原発を再稼働する必要があるのか。政治家が昔の「軍事大国」のような意識で、原発を持っていなければ大国ではないとでも考えているのか。
 国は、原発の電気は自然エネルギーより安いと言う。だが、東電が原発事故の被害者に支払う賠償金は、原発を持つ大手電力会社以外と契約する人も電気料金の一部として負担させられている。ふざけるなと言いたい。(聞き手・宮尾幹成)

<はらなか・かつゆき>1940年、福島県浪江町生まれ。日本大医学部卒。東京大医学部助教授などを経て、2004~10年に茨城県医師会長、民主党政権下の10~12年に第18代日本医師会長を務めた。茨城県筑西市の医療法人杏仁会大圃(おおはた)病院理事長。

東海第二原発とは?

 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給していた。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。
 2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。再稼働の対策工事は21年3月までかかる見込みで、資金支援のため、東京電力などが約3500億円を拠出する構図も固まった。再稼働には、東海村や水戸市など6市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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