東京湾周辺の放射能汚染追う 40地点で採取

 日本橋川をはじめ、都心の川に東京電力福島第一原発事故による放射性セシウム汚染が残ることは十月九日付本紙で報じた。気になるのは、口にする機会も多い東京湾の魚が暮らす海底の状況だ。九月のシルバーウイークのうち三日間を使い、ボートで湾一円を走り、堆積物を採取した。(山川剛史、大野孝志)

海底の堆積物を採取する佐藤斉茨城県立医療大学教授(右)ら=9月23日、羽田沖で

■40地点超で採取

 九月二十一日朝、横浜市内のマリーナで独協医科大の木村真三准教授ら三人と合流し、早速出航した。
 二回目となる東京湾調査では、原子力規制委員会による十八の調査地点はもとより、湾に注ぐ主要河川の河口域も徹底的に調べようと決めた。機動的に動けるボートとはいえ、採取目標は四十地点超。最短ルートを何度も探ったが、どう回っても計百四十マイル(約二百二十六キロ)は走る計算になる。採取時間も考えるとギリギリの行程だ。
 操船は記者(山川)が担当。「先生方、海はいいなぎになりましたが、厳しい船旅ですよ。覚悟してください」。冗談めかして言ったが、実際きつかった。
 採泥器は四キログラムほどの重さがあるが、ボートは潮流や風で流される。水深は最大二五メートルあり、六、七階のビルから地上を狙うイメージ。採泥器がまっすぐ着底しないと底に採取口が刺さらず、採取できない。操船者と採取者の息が合うことがポイントとなる。

■水分飛ばし測定

 もわっとした感触と重量感がロープから伝わってくる。「バッチリだ!」。採泥器に、真っ黒なヘドロ状のものが大量に入っているのを見て、船内に喜びの声が広がる。事情を知らない人からは、こっけいな姿に映っただろう。連日夕暮れまで採取を続けた。
 作業は採取しただけでは終わらない。ヘドロなどは九割ほどが水分。完全に水分をなくさないと正確なセシウム濃度は測れない。
 皿にあけ、可能な限りペーパータオルで水分を取った後、布団乾燥機を改造した乾燥機に入れる。途中で何度もかき混ぜ、貝殻などをていねいに取り除く。カチカチになったものはすりつぶして粉末にする。気の遠くなる作業を五昼夜、山川宅で続けた。
 汗と忍耐で得た堆積物を独協医科大と長崎大で測定してもらい、本紙でまとめたのが図だ。
 東京湾全体では、魚への影響は心配なさそうなレベルだと言える。だが、事故から五年近くを経てもセシウムはなくならない。半減期が二年のセシウム134も検出され、明らかに福島第一由来だと分かる。花見川などの河口域では、要注意の水準が続いている。
 今後、こうした汚染は新たな堆積物に埋もれていくのか、拡散していくのか。答えは、継続的な調査で得るしかない。

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