福島第一原発の今(下)

 東京電力福島第一原発は事故から8年半が過ぎ、除染や舗装が進んで放射線量が比較的低いエリアが敷地の9割以上となった。防護服やマスクを必要としなくなった場所もあるが、原子炉建屋とその周辺は依然として線量が高い。10月23日に構内に入った本紙取材班は線量計を持参し、各地点でどれぐらい被ばくするのかを調べた。線量の値から、被ばくリスクの現状を報告する。(渡辺聖子、写真は山川剛史)

がれき撤去が進められる1号機原子炉建屋。コンクリート片はかなり減ったが、落下したクレーンが使用済み核燃料プールをふさぎ、格納容器上のふたがズレ落ちたまま=いずれも福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 特別な装備を必要としないエリアでも、移動する間に線量計の値は刻々と変わる。1~4号機が見渡せる高台(地図①)。1号機原子炉建屋では、最上階に積み重なったがれきの撤去が進む。むき出しになった鉄骨の向こう側に、秋晴れの空が広がっていた。線量計は毎時115マイクロシーベルトを示した。事故の現場が、すぐ目の前にあることを痛感する。

 建屋で発生する汚染水を浄化して保管するタンクが並ぶ一帯(地図②)に立つと、線量は一気に下がった。毎時1.15マイクロシーベルトの数字に驚きつつ、ほっとする自分がいた。それでも東京都心の約20倍の値だ。

無数に並ぶ処理水タンクで作業をする作業員たち

 4号機の原子炉建屋前(地図③)へ。移動のバスの中で一桁だった値が、降りたとたん二桁に倍増した。足元には、線量を低減するための分厚い鉄板が敷かれている。その上を歩き、2、3号機の間で毎時74.7マイクロシーベルトと出た。使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しが進む3号機の原子炉建屋に目を向けると、水素爆発で崩れ落ちた壁が囲いの間から見えた。

ドーム形のカバーで最上階が覆われた3号機(奥)では、使用済み核燃料プールから核燃料28体を搬出したものの、機器の故障で取り出し作業は中断。538体の核燃料が残っている。4号機(手前)は既に核燃料がない

 地上にたたまれた巨大クレーンを、作業員が整備していた(地図④)。顔全体を覆うマスクを付け、白い防護服を着ている。その方向に向けた線量計の値は、毎時90.7マイクロシーベルトと上昇。ヘルメットとマスクだけという軽装の自分が立つエリアと、特別な装備を必要とする作業員のいるエリアの境は、目に見えない。

2、3号機の間で、超大型クレーンの整備をする作業員たち。現場の放射線量は毎時90.7マイクロシーベルトと非常に高かった

 敷地内を取材した約2時間での被ばく線量は累積で50.43マイクロシーベルト。歯のエックス線検査で5回分に相当する。ただ、東京都内で同じ時間取材した場合の被ばく線量は約0.1マイクロシーベルトしかなく、日常生活では決して経験することがないレベルだった。それ以上に過酷な現場で、作業員たちは事故収束を続けている。    

海沿いの道路から見た3号機タービン建屋(手前右)。奥は4号機のタービン建屋

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