福島第一原発の今(上)

 東京電力福島第一原発に10月23日、本紙原発取材班が入った。構内では、1、2号機原子炉建屋そばに立つ排気筒の解体、3号機原子炉建屋上部にある使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しなど、地震や津波に備えたリスク低減対策が進む。事故から8年半が過ぎた現場の状況を、2回に分けて報告する。(福岡範行、写真は山川剛史)

1、2号機排気筒と切断装置=写真はいずれも福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

事故から8年半、リスク低減道半ば

 1、2号機原子炉建屋から100メートル離れた高台に立った。水素爆発で壁や天井が吹き飛んだ1号機最上階が、ほぼ同じ高さ。そばに立つ排気筒の足元を見下ろすと、解体に使う切断装置2台(24.5トンと33.4トン)の周りはコンテナや配管ですき間なく埋まっている。装置をつり上げる巨大クレーンは走行できるものの、身動きは取れそうにない。東電の広報担当者は「限られたスペースなので、作業順序を整理しないと進まない」と説明した。
 排気筒は支柱中央部分に複数の損傷があり、倒壊に備えて上半分の解体を進めている。高さは原子炉建屋の倍以上の120メートルあったが、既に頂部から2~3メートルずつ3ブロック切断した。

排気筒解体に使う2種類の切断装置。手前が頂部から3ブロック目で使用。奥の傘のようなものは今後、鉄塔部分の解体に使う
10月21日夜に切断され、つり下ろされた排気筒3ブロック目は2号機原子炉建屋前に置かれていた
3ブロック目まで切断が終わった1、2号機の排気筒

 2、3号機の建屋西側で切断装置を間近に見た。全身を白い防護服で覆った作業員が軽装の取材班に気づき、バリケードを張り直した。作業現場は汚染リスクが高いエリア。現場の過酷さを垣間見た。海沿いの建屋東側には、切断された筒身が置かれていた。

排気筒の解体装置を整備する作業員たち

 平均で毎日約100トン発生している建屋の高濃度汚染水。浄化処理した水をためるタンクは二重の堰(せき)で囲まれていた。内堀は雨水よけのシートがかぶせられ、タンクからの漏えい防止に苦心した様子がうかがえる。
 3号機タービン建屋の屋根は水素爆発で大きく穴が開いたまま。雨が入り、汚染水を増やす。現場の放射線量が高く、補修は2020年度上期までかかる。

浄化処理した建屋の汚染水の貯蔵タンク。原子炉建屋の西側高台に大量に並んでいる
3号機タービン建屋。大きく損傷した屋根からは雨水が流入し、汚染水を増やす原因に。補修に向けた作業はまだ準備中

 建屋東側の海沿いでは、高さ1.5メートルのL字形の鉄筋コンクリートが並ぶ。9月に新たな防潮堤(長さ600メートル)の設置が始まった。北海道東部の千島海溝沖で巨大地震が起きれば、高さ10メートルを超す津波襲来を見込む。この新たな壁が津波の威力を弱めるが、完成は20年度上期とまだ先だ。

海側では、L字形の鉄筋コンクリートの防潮堤を設置する工事が進む。建屋への浸水抑制のほか、汚染水が海に流出するのを防ぐ狙い
海側敷地に回ると、切断された排気筒の頂部(左)と2ブロック目が置かれていた
2019年10月30日東京新聞紙面

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