再稼働固執の東電に住民憤り、新増設難しく柏崎刈羽原発を温存

 新潟県柏崎市長が、柏崎刈羽6、7号機再稼働の条件として東京電力に求めていたのは1~5号機の廃炉計画。だが、東電は8月26日の回答で、廃炉の確約を避けた。世界最悪レベルとなった福島第一原発の事故収束作業を続ける当事者が、地元に「条件」を突き返し、原発再稼働に固執する姿勢を鮮明にしたことに、怒りや失望が広がっている。(小川慎一、松尾博史)

新潟県の東京電力柏崎刈羽原発6号機(右)と7号機

 「廃炉計画を出してほしければ、再稼働させろと言っているのと同じだ」。原発に反対する市民団体で共同代表を務める柏崎市の竹内英子さん(50)は、東電の回答に強く憤った。
 回答書はA4判4枚。肝となる部分には「6、7号機が再稼働した後5年以内に、1~5号機のうち1基以上について、廃炉も想定したステップを踏んでまいります」と書かれていた。
 桜井雅浩・柏崎市長は「落第点ではない」としたが、竹内さんは「(100点満点で)10点。1基は必ず廃炉にすると約束すると思ったが、東電はひきょうだ。市長はそのことに気付いて、怒ってほしい」と指摘した。
 経営再建中の東電にとって、柏崎刈羽6、7号機の再稼働は悲願。1基の稼働で約1100億円のコスト減を見込み、利益をてこに福島事故の収束作業や賠償費用を捻出する計画だ。
 だが、再稼働への道は険しい。新潟県知事は福島事故の独自検証が終わるまでは、再稼働の議論はしないと明言。7月の参院選では原発反対を訴えた候補が当選した。
 こうした逆境の中でも東電が廃炉を確約できない背景には、政府の「原発ありき」の基本計画がある。安倍政権は昨年、30年度の電源の20~22%を原発とする基本計画をまとめた。しかし、福島事故後は原発の廃炉が相次ぐ。原発の新増設がない限り、これ以上の廃炉が続けば、基本計画は絵に描いた餅に終わる。
 温存しようとする柏崎刈羽1~5号機は停止期間が7年を超えている上、再稼働に必要な原子力規制委員会の審査を受けていない。動かせる状態になるまでには長期間かかり、新規制基準適合に向けた巨額の工事費も必要となる。原則40年という運転期間も近づく。運転延長には費用の追加負担が避けられない。
 経済産業省の関係者は「事故を起こした東電が原発を動かすのは相当厳しい。重要なのは動かせる原発を維持しておくことだが、いばらの道だ」と話した。

廃炉確約なし「最悪の回答」

 地元住民からは「中身がない」との怒りの声が上がった。
 同原発差し止め訴訟の原告共同代表を務める新潟県小千谷市の住職麻田弘潤さん(43)は「中身がない。結局廃炉にしないという判断もありうる」と不信感をあらわにした。 
 再稼働に慎重な立場で勉強会を開いている新潟市の無職桑原三恵さん(71)は「再稼働容認の条件として文書提出を求めた市長に『再稼働しないと答えられない』と条件を突き返した。最悪の回答だ」と憤った。
 エネルギー確保の観点から条件付きで原発を容認する柏崎市の建築業長谷川敏栄さん(52)は「方向性が見えなさすぎる。きちんとした工程表を出して廃炉を検討すべきだ」と話した。

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