活用見えぬ核燃運搬船「開栄丸」、国費130億円投入

 研究用原子炉で使った核燃料を運搬する専用船「開栄丸」が、使い道もなく10年にわたって北海道・室蘭港に係留され、たなざらしになっている。建造や維持費に国費約130億円が投じられたものの、輸送実績は2006年から09年までのわずか4回だけ。所有する「原燃輸送」(東京都港区)や電力業界は新たな利用を模索するが、針路は見えない。 (宮尾幹成)

巨額の国費を投じながら、使用中止になった使用済み核燃料運搬船「開栄丸」=5月、北海道室蘭市で

契約打ち切り

 今年5月、室蘭港北側にあるJR本輪西(もとわにし)駅前の海岸に開栄丸の姿があった。全長100メートル、全幅16.5メートル。使用済み核燃料を入れる容器12基を積載できる。船上に人の姿はなかった。
 開栄丸は06年、国の研究機関の日本原子力研究開発機構(原子力機構)が廃炉中の新型転換原型炉ふげん(福井県)の使用済み核燃料を、東海再処理施設(茨城県)へ運ぶために建造された。原子力機構を所管する文部科学省は建造・維持費約285億円を26年かけて支払う計画を立て、14年度までに約100億円を支出した。
 だが06~07年にふげんの使用済み核燃料を3回運んだ以外は、09年に関西電力大飯原発(福井県)から核燃料1体を茨城県東海村の別の施設へ運搬しただけ。15年、自民党行政改革推進本部の調査で問題となり、大幅な予算削減を迫られた原子力機構は、原燃輸送との契約の打ち切りを決めた。それでも国は20年度までの5年間、維持費30億円を負担する。

海外輸送できず

 ふげんには466体の使用済み核燃料が残っているが、運び先だった東海再処理施設は18年から廃止作業中で、核燃料の受け入れはできない。原子力機構は同施設で保管中の265体の核燃料とともにフランスへの搬出を検討している。しかし、開栄丸は使用済み核燃料を海外へ輸送するのに必要な防護措置が施されていない。
 開栄丸は、青森県六ケ所村の再処理工場で使用済み核燃料から取り出したウランとプルトニウムを混ぜたMOX(モックス、混合酸化物)粉末や、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の使用済みMOX燃料を運ぶ許可を保有するものの、再処理工場はトラブル続きで本格稼働のめどが立たない。もんじゅも廃炉となり、残る使用済みMOX燃料はフランスへ搬出される可能性が高く、開栄丸の出番はない。

別の船も動かず

 開栄丸の使い道について原燃輸送は「原発の使用済み核燃料も運べるが、何も決まっていない。廃船にする予定はない」(広報)と説明。出資者である大手電力10社でつくる電気事業連合会も「業界として検討はしているものの、未定」としている。
 国の核燃料サイクル政策では、使用済み核燃料は再処理工場へ運ばれる計画だが、工場内の核燃料を保管するプールはほぼ満杯。原燃輸送が所有し、各地の原発から再処理工場向けの輸送を担う別の船「六栄丸」も、17年度以降は輸送実績がない。
 現在、原燃輸送が手がけるのは、原発から出る放射能の比較的低い廃棄物の入ったドラム缶を、六ケ所村の処分場へ運ぶ業務だけ。核燃料サイクル政策の行き詰まりを象徴している。

核燃料サイクルとは?

 日本は、原発で使った核燃料の再利用が基本方針。構想では、再処理工場で使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜてMOX燃料に加工して使う。再利用は通常の原発と高速炉の二つの道筋があるが、原発の核燃料の再処理は本格稼働が見通せない。高速炉の方は実現のめどさえなく、構想は破綻している。

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