<ドイツ最前線報告・上>送電会社は再生エネを拒めない

 脱原発と脱石炭を進めるドイツのアルトマイヤー経済・エネルギー相が本紙への寄稿で、日本に再生可能エネルギー推進に向けた日独連携を呼び掛けた。再エネが伸び悩む日本に対し、大幅拡大に成功し、2022年までの原発ゼロも実現しつつあるドイツ。現地を訪ね、仕組みを探った。 (伊藤弘喜、写真も)

ドイツの首都ベルリン近郊に並ぶ風力発電

 緑の野原に見渡す限り巨大な風車が立ち並ぶ。首都ベルリンでは、都心から少し車を走らせただけでこんな風景が飛び込んでくる。家々の三角屋根にも太陽光パネルがあるのは当たり前。再生エネはすっかり人々の暮らしの一部だ。
 「再生エネ発電所の接続を断る権限は私たちにはありません」。独テネット社のベルリン事務所。広報担当のウルリケ・ホヘンスさんが事もなげに語った。
 テネットは自前の発電所を持たない。送電線だけを持ち、他社の発電所でつくられた電気を家庭や企業に送る「送電会社」だ。ドイツでは四つの同様の会社が送電網を運営する。
 大手電力会社が送電網も運営する日本ではなじみのない形だが、「送電網中立」のこの仕組みこそが、実は「再生エネ拡大の原動力」(ホヘンスさん)だ。

 日本では大手電力は自社の原発や火力発電所の稼働率を高めた方がもうかるため自前の発電所の送電を優先しがち。再生エネ発電所の接続要請は「電線に余裕がない」と断る例が相次ぐ。ホヘンスさんはドイツでは「大手の発電所だけが優先される事態は起こりえない」と話す。
 テネットも元は大手電力会社の送電部門だった。09年に欧州連合(EU)が大手による独占を排し、参入を自由化するため送電の分離を各国に義務付け。これを受け、親会社からオランダの送電会社に売却され、独テネットが生まれた。
 ドイツは2000年から「再生エネ最優先」も法律で定めた。送電会社には再生エネを原発などより優先して接続する義務が課され、電線に余裕がなければ、増強しなければならない。
 一時的に電力供給が需要を超えそうな時も再生エネ発電所が出力抑制を求められるのは一番後。日本各地で大手電力によりバイオマスや太陽光・風力の再生エネが原発より先に抑制を指示され、補償もないのと対照的だ。
 再生エネを増やす幾重ものルールの背景には、1986年の旧ソ連のチェルノブイリ事故をきっかけに脱原発を決めたドイツの強い政治的な意志がある。
 市民も草の根からこれを支持する。70年代から続く反原発の流れも相まって、市民が再生エネ発電所に出資する例が拡大。調査会社によると再エネ発電所の出資者別では市民が31.5%と最も多く、企業や銀行を引き離す。
 「アグリゲーター」(まとめ役)と呼ばれる新興企業も育ってきた。大学院生だったヨヘン・シュビルさんらが2009年に創業したネクスト・クラフトベルケは、代表例。数千カ所の再エネ発電所と、電気を使う側の工場や各家庭の間に立ち、精緻な天気予報や需要予測に基づき、各発電所の出力を通信機器で細かく遠隔コントロールする。
 「再生エネ発電所はお天気次第で出力が変わるため、調整役が不可欠。発電はもう大手電力の特権ではない。小さな事業者も参入できるようにしてエネルギー転換を進めるのが私たちの使命です」。シュビルさんは力を込めた。

「小さな事業者を後押しするのが使命」と語るネクスト・クラフトベルケ創業者のヨヘン・シュヴィル氏=ドイツ・ベルリンで

発電と送電の分離

ドイツでは送電会社4社のうち、テネットなど2社が元の親会社から資本関係も含め完全分離された。ほかの2社は資本関係を残す形で分社化。日本でも法改正に基づき大手電力各社が2020年度から送電部門を分社化予定。東京電力はそれに先駆け16年に分社化。だが、日本では、送電部門が同じグループ傘下に子会社として入り完全分離といえない状態が続く。

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