「エネルギーシフトの世界的推進のために」 アルトマイヤー独経済・エネ相寄稿全文

 エネルギーシフトは、私たちの時代に突きつけられている大きな課題です。安全で環境に優しく、経済的に豊かな未来を築くためには、まさにドイツが現在取り組んでいるエネルギー供給の根本的な転換が欠かせません。ドイツは近い将来、化石燃料や核燃料の利用をやめ、その分を再生可能エネルギーの利用拡大と一層のエネルギー効率向上で補っていきます。

寄稿のドイツ語原文(PDF)はこちらからダウンロードできます。

国際競争力との両立

 ドイツは着実に前進を遂げてきました。再エネは社会から支持され、総電力供給量の約40%を太陽、風力、水力、バイオマス発電が担うようになり、今や最も重要な電源となっています。今後この比率を一層高め、電力、熱、交通、農業の各部門において、エネルギーの高効率化、インフラや設備の最新化、イノベーションやサービスの創出を進めます。またこうした取り組みでは、エネルギーの安定供給や産業拠点としてのドイツの国際競争力維持との両立をあらゆる面で図らなければなりません。
 再エネ比率の増加は、電力供給における変動の増大をもたらすため、多様な方法で電力需給のバランスを保つ必要性を生じさせています。具体的には、再エネや従来型電源の調整力の拡大に加え、電力網の拡充、デマンドレスポンス(需要側の調整)の拡大、また揚水発電やパワー・ツー・ヒート(電力から熱への転換)、蓄電池といったエネルギー貯蔵技術を駆使することです。再エネを電力分野だけでなく、交通や熱の分野でも活用する重要性もさらに高まっていくでしょう。 

送配電網の増強策

  再エネの拡大においてドイツが直面する大きな課題のひとつが、電力網拡充の推進です。風力発電のかなりの部分は北部や東部にありますが、電力需要は南部や西部にあります。送電容量は既に限界に達しており、南部の産業地域にある原発や石炭火力発電所が今後稼働を停止していくことを考えると、この課題がいかに焦眉の急を要するかは容易に想像がつくでしょう。
 電力の安定供給を確保し続けるためにも、隣国との国際連系線を含めた電力網の拡充と大容量化が必要です。分散型電源や電気自動車の利用拡大によって、地域レベルでも電力網の容量不足が生じる可能性があります。従って、地域間の送電網と併せて各地域内の配電網も増強することが非常に重要なのです。
 独経済・エネルギー省は「電力網行動計画」を策定し、2021年までに数100キロに及ぶ新規送電網の整備を承認し、建設を後押しします。今年四月には「改正系統整備迅速化法」が可決され、電力網の建設や整備などの手続きが簡素化、迅速化されました。大規模なインフラ整備を成功に導くために大切なのは広範囲な市民参画。電力網整備への社会的な支持を広めるため、経済・エネルギー省は市民対話プログラムを支援し、住民や関心ある市民との対話に取り組んでいます。 

脱石炭の構造改革 

 もうひとつの大きな課題は石炭火力発電の廃止です。社会の各層を代表する委員で構成される「成長・構造改革・雇用委員会」(通称「石炭委員会」)は今年2月に最終報告書を政府に提出しました。これにより、脱石炭に向けた幅広い社会的なコンセンサス(合意)が示されました。報告書は遅くとも38年までに石炭火力から撤退し、それに向けて石炭火力発電所を段階的に止め、温室効果ガスの排出がより少ない電源に置き換えていくことを提言しています。
 ここでも再エネの一層の推進が求められるので、大容量の電力網の整備が必要です。脱石炭は、炭鉱地域にとって厳しい構造改革を迫られることに他なりません。今ある強みを生かしながら将来につながる産業を新たに興していかなければならず、国は炭鉱地域の改革を支援し、数100億ユーロ規模の財政措置を20年にわたり講じていきます。
 こうした構造改革が地域住民の幸せに資する形で実現できると確信しています。脱石炭の構造改革は気候変動対策とともに推進できるのです。エネルギーシステムの転換と豊かさや雇用の確保は両立可能であることを、ドイツは先進工業国として示していけると確信しています。そのことが他国においても持続可能なエネルギーシフトにかじを切り、必要な変革を実施する機運を高めることにつながっていくでしょう。 

日本への期待

 17年のドイツ・ハンブルクのG20で採択された「成長のための気候変動とエネルギー行動計画」では、パリ協定の実施と世界的なエネルギーシフトの推進に向けた措置について合意が実現しました。エネルギーシフトとそれに伴う構造改革において、各国が緊密に協力し、そこから生まれるイノベーション、持続可能な成長や雇用の機会を生かし、ともに課題に取り組んでいくという点が重要です。日本が議長国を担う今年のG20も、世界的なエネルギーシフトを加速する大きな契機となります。
 日独が協調し、一貫してこの道を進んでいくことが重要です。両国は、持続可能な成長とイノベーションを進めるとともに、エネルギー政策や温暖化対策の目標達成を目指す世界的な取り組みのけん引役を担えるのです。特にエネルギーシフトに欠かせない革新的な技術や解決法を共同開発することで、世界のけん引役としてのメリットを長期にわたって享受できるようになります。
 こうした点に関し、日独両国は政府間対話、学術交流、企業間協力・交流や今年2月に発効した日EU経済連携協定(EPA)等、さまざまなレベルで数多くの対話を進めています。例えばドイツ側は、変動性再エネの普及拡大やそのシステム統合に関し培ってきた経験を共有し、日本から水素やエネルギー貯蔵、スマートグリッドについて学ぶといった具合に、継続的に知見を共有することで、互いの強みを生かしていくことが可能となるでしょう。

関連記事