延命する米原発、州政府が巨額優遇で支援 再エネ普及妨げの懸念

 米国で経済性が落ちている原発を「温室効果ガスを出さないクリーン電源」として州政府レベルで支援し、延命させる動きが広がっている。4月には東部ニュージャージー州で年3億ドル(330億円)の助成が決まった。こうした優遇策の財源は電気料金の引き上げだ。市場競争をゆがめ、再生可能エネルギーの普及を妨げるなど批判も根強い。(ニューヨーク・赤川肇)

9月末までの閉鎖が発表されたスリーマイル島原発=3月、米ペンシルベニア州ゴールズボロで、赤川肇撮影

疑問ある優遇

 「炭素排出量を減らす道義的責任がある」。ニュージャージー州公共事業委員会は4月中旬、州内の原発全3基を3年にわたり助成する制度を賛成4、反対1で認めた。フィオルダリソ委員長はこう正当性を強調しつつ、発電源の多様性や地元経済も考慮したと明かした。
 業界団体の米原子力エネルギー協会(NEI)は「3基は州の経済と環境に重要だ」と歓迎。原発を所有する電力会社は「何千人もの雇用喪失」が避けられたと主張しており、大義名分の「気候変動対策」にどこまで重きを置いた優遇策なのか疑問が残る。
 AP通信などによると、1世帯あたりの電気料金は年30~40ドル上がる。さらに原発を守ることで再エネ発電への切り替えが遅れ、再エネ推進の財源が削られる懸念も出ている。
 同様の優遇策は東部ニューヨーク、コネティカット、中西部イリノイの各州政府が既に導入。中西部オハイオ、東部ペンシルベニアの各州議会でも導入の是非が話し合われている。

競争力低下

 財政支援の背景にあるのが原発の競争力低下だ。
 米エネルギー情報局(EIA)によると、ピーク時の1990年には全米で112基が稼働していたが、現在は98基。シェールガス革命や再エネの普及で原発の優位性が衰え、運転許可期限を待たずに退役を迫られる例が相次いでいる。
 8日に9月末での閉鎖が発表されたスリーマイル島原発は2034年までの運転許可があったが、採算割れが続く中、頼みの綱だった地元ペンシルベニア州の財政支援の決定が間に合わなかった。
 全米の発電量に占める原発の割合は19%。EIAは3月に発表した報告書で、これが50年には12%まで減少し、減った分は主に天然ガスのほか風力、太陽光などの再エネ発電で補われると予想する。

党派超えて原発派多く

 ただ、トランプ米政権はエネルギーの多様性や安全保障を理由に、原発を保護する立場だ。与党共和党だけでなく野党民主党の一部も「クリーン電源」として維持や推進に積極的で、ニュージャージー州の助成制度の基となる法案に署名したのも民主党知事だった。
 ニューヨーク・タイムズ紙が4月、20年大統領選の民主党候補18人に聞いた調査では、原発に反対したのはサンダース上院議員など3人だけ。7人は次世代型原子炉の開発も含めて原発に前向きだった。
 フロリダ州立大のアダム・ミルサップ准教授(公共政策)は、発電源の一つとして原発を生かす選択肢は否定しないが、優遇策には「高い電気料金が他の経済分野に悪影響を及ぼすだけでなく、より新しく効率的な再エネ発電を排除しかねない」と問題視している。

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