首都圏6知事、当事者意識の低さ浮き彫り 東海第二原発の再稼働賛否示さず

 日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す東海第二原発(茨城県東海村)について、本紙は茨城を除く関東1都5県の6知事に再稼働の是非をアンケートしたところ、賛否を明確に示す知事はいなかった。首都圏は深刻な事故で被害を受ける危険性があるが、再稼働の判断を国に委ねる回答が複数あり、当事者意識の低さが浮き彫りとなった。(越田普之)

原電が再稼働を目指している東海第二原発(右)=茨城県東海村

 原電は2月、東海第二の再稼働を目指す意向を正式表明。東海第二から1都5県の距離は東京電力福島第一原発より近く、放射能が漏れる深刻な事故が起きれば、福島事故を上回る被害が想定される。立地自治体の茨城県の大井川和彦知事はこれまでに再稼働への賛否を明らかにしていないが、「判断に当たっては県民の声に耳を傾ける」と説明している。
 だが、原発30キロ圏の住民約94万人の約半分は千葉、埼玉、栃木、群馬を含む5県に避難する計画のため、影響が及ぶのは茨城県だけではない。
 再稼働の賛否について、3知事が「どちらとも言えない」、残りの3知事は回答なしだった。
 神奈川県の黒岩祐治知事と栃木県の福田富一知事は「地元の理解が不可欠」と理由を説明。県議会が原発再稼働推進の意見書を可決した埼玉県の上田清司知事は「隣接県が軽々にものを言うことはできない」とした上で、「地元の理解と支持を得ることが不可欠」と回答した。
 一方、東京都の小池百合子、千葉県の森田健作、群馬県の大沢正明の3知事は、原発の再稼働は国が責任を持って判断するべきだと答えた。
 小池知事は希望の党代表として臨んだ2017年の衆院選で、30年までの原発ゼロ達成を掲げた。本紙インタビューにも「できない、と言うよりどうやって可能にするかを考えたい」と語っていたが、回答にそうした記述はなかった。
 アンケートでは原発が立地する自治体の知事に再稼働を止める権限があると考えるかどうかも聞いたが、知事の権限を肯定する回答はゼロだった。

命にかかわる判断を国に丸投げ

 東海第二原発が再稼働すれば、周辺の自治体も茨城県と変わらないリスクにさらされる。だが、1都5県の知事に再稼働の是非を聞いた本紙アンケートからは、住民の暮らしと命にかかわる判断を国に丸投げする姿勢がにじんだ。
 NPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「東海第二で事故が起きれば、福島事故より大きい影響が出る可能性があるのに、人ごとのような回答ばかりで失望した」と嘆く。東京、千葉、群馬の3知事が国の責任で判断すべきだとしたことにも、「『原子力は国策』という言い訳が通用しないのは、福島の被害で明らかだ。そのことへの理解も反省もない」と批判した。

東海第二近くの国道6号には、起点の東京・日本橋まで123キロとの表示がある=茨城県東海村で

知事権限は「最後の壁」も...

 再稼働を止める権限があると答えた知事もゼロ。知事の権限を巡っては、脱原発を掲げて2016年7月に初当選した鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事が、九州電力川内(せんだい)原発の再稼働を巡り、「私に稼働させるか、させないかの権限はない」と発言し、物議を醸した。
 知事に再稼働を止める権限を明文化した法律はないが、国のエネルギー基本計画では「(再稼働は)立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」と明記している。立地道県と原子力事業者は安全協定も結んでおり、知事の同意は再稼働に当たっての「最後の壁」となっている。
 こうした実態を背景に、中部電力浜岡原発が立地する静岡県の川勝平太知事は、中電から再稼働への同意を求められても拒否する考えを表明している。
 アンケートに答えた知事のうち、神奈川県の黒岩祐治知事は「法的権限はない」としながらも、「原発に依存しすぎたエネルギー体系から脱する『脱原発』を加速させることが重要」とした。
 東京大大学院の金井利之教授(自治体行政学)は「知事には原子炉規制法での権限はないが、事業者と結んでいる安全協定に基づく法的・政治的責務や、地方自治法と災害対策基本法などによる法的権限はある」と説明。三反園知事らの「権限はなし」という発言について「狭い法的権限にすぎず、説明としては不十分だ」としながら、「負託された責務や権限を知事がどう使うのか、県民本位の判断になるよう、県民が監督していかなければならない」とした。

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