電力会社の甘え一蹴 規制委「対テロ施設未完成の原発停止」

 原子力規制委員会が電力会社の甘い要求をはねつけた。意図的な航空機衝突などの原発へのテロ攻撃などに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)を建設中の西日本の電力3社が、工事が間に合わないとして「5年」の完成期限の延長を求めていたが、退けられた。各社は来年以降の電力需給計画の見直しも迫られそうだ。(宮尾幹成、松尾博史)

来年3月から5月にかけて、テロ対策の特重施設の完成期限を迎える九州電力川内原発1号機(右)と2号機

拒絶

 関西、四国、九州の3電力は今月17日の規制委との意見交換で、大規模で難しい工事が必要になる「状況変化」があったと主張。「原発本体の工事計画の認可から5年」としている完成期限の延長を要請した。
 これに対し、24日の規制委会合では、5人の委員全員が「参酌(考慮する)に足る状況変化があったとは考えられない」(更田豊志委員長)「自然災害などで工事が著しく遅れたということはない」(石渡明委員)などと一蹴した。
 一方、運転中に期限を迎えた原発を直ちに停止させるべきかについては、「個別に事情を見た上で判断すべき」(伴信彦委員)と柔軟な対応を認める意見も出た。だが、更田氏が「基準不適合状態になった原子力施設の運用を見過ごすことは規制委にとってはできない」と指摘し、最終的には例外を認めないことで全委員が一致した。

唐突

 3電力の期限延長の要求に対しては、各地の原発差し止め裁判に携わる「脱原発弁護団全国連絡会」が「規制委に圧力をかけている。許し難い」と非難する声明を23日に発表。海渡(かいど)雄一共同代表は「規制委は毅然(きぜん)とした態度を取ってほしい」と求めていた。
 規制委にとっても延長要求は「唐突」だったようだ。各社が17年12月から今月中旬にかけて規制委に提出していた特重施設に関する申請書には、いずれも「期限内に設置工事が完了する予定」と記されていたからだ。今年1月に行われた意見交換でも、電力会社側は特重施設の工事について「もう少し様子を見ていただきたい」としか言っていなかった。
 更田氏は24日の記者会見で、「工期に影響が出るようであれば、その時点で規制委に伝えるべきだ。工事だけでなく、規制当局の出方に対しても見通しが甘かった。差し迫って訴えれば何とかなると思ったら大間違いだ」と批判した。

波紋

 西日本の電力各社は原発を再稼働させることで電気料金を値下げし、再生可能エネルギーで勝負してくる新電力との競争で優位に立とうとしてきた。今回の規制委の判断は、各社の経営戦略にも影響する可能性がある。
 規制委の決定を受け、九州電は「早期完成に向けて引き続き最大限の努力を継続する」とコメント。電力各社でつくる電気事業連合会の広報担当者は「委員から『個別の事情を確認する必要もある』との意見もあった。引き続き規制委に丁寧に説明したい」と述べ、判断の見直しへの期待をにじませた。
 だが、更田氏は会見で「個々の事業者の事情は聞くが、今日の方針の適用を免れるケースがあるとは思っていない」と、例外をつくらない考えを強調した。

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