<原発のない国へ すぐそばの未来・番外編>明治の水力発電所と生きる街

 本紙連載「原発のない国へ」をネットで読んだ北海道の方から、「昨年9月の北海道地震の際、全域停電に巻き込まれなかった地区があります。ぜひ取材を」と情報が寄せられた。
 その地区とは、全国屈指の透明度を誇る支笏湖の温泉街。明治43(1910)年に運転開始した王子製紙千歳第一発電所(2万5400キロワット、千歳市)など流域五つの水力発電所の電力を使い続けている。送電線は、北海道電力から完全分離した王子製紙独自のもの。そのおかげで、湖畔のホテルや飲食店、民家など約100軒は、地震直後を除いて停電にならなかった。

 現場を訪れると、レンガ造りの発電所、取水ぜき、水路とも年代を感じさせる。設備も多くは建設当初のものを手直しして使っているが、「まだまだ現役でいけます」(同社苫小牧工場動力部の岩筋道博グループマネージャー)。
 製紙会社が発送電から小売りまで? にわかに信じられなかったが、森の電柱にも住宅街の電柱にも「王子湖畔配電線」のプレートがあった。契約者に電力料金の領収書を見せてもらうと、確かに王子製紙発行のものだった。
 設備点検のため毎年11月中旬、数時間の「計画停電」があり、その日は閉店する店が多い。台風による倒木で電線が切れて停電になることもある。料金は北海道電と同じにしているが、送電線が外部に通じていないため、王子製紙以外と契約を結ぶこともできない。
 「その日だけの話。寒さは灯油ストーブでしのげる」
 「停電時は集合住宅の上層階は水道が止まる。でも計画停電や台風の日は、風呂に水を張ったままにし、飲み水はペットボトルにくんでおく」
 「店の明かりはバッテリーに切り替える。暖房は元からまきストーブ。冷蔵庫も短時間の停電なら問題ない。ヒメマスも焼き物で出しているからね」
 住民たちは、多少の不便とうまく付き合ってきた様子だった。(山川剛史)

千歳第一発電所の内部や、送電網の様子を収めた動画
千歳第一発電所と水圧鉄管
千歳第一発電所の建屋。レンガ造りで空襲避けにグレーのペンキが塗られている
明治の運転開始当初から使われている発電機(GE製)と水車(スイス製)
建屋内にあるリベット打ちのクレーンも明治時代のもの(東京芝浦製作所製)
千歳川をせき止め、発電所に水を送る堰堤
堰堤から送られてくる豊富な水。建屋の向こう側は落差130㍍
完成したころの千歳第一発電所(1910年ころ)
周辺五つの水力発電所と送電網はここで管理。温泉街への送電線は一番奥の操作盤で管理する

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